研究課題/領域番号 |
23540537
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高木 秀雄 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60154754)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 三波川変成帯 / 久万層群 / ひわだ峠層 / 青岩礫岩 |
研究概要 |
平成23年度は,4回にわたる地質調査と年代測定用礫の採取を,愛媛県久万町のひわだ峠層と久万層群にて実施した.また,関東山地荒川沿いでも,砂質片岩礫の採取を実施した.それらの礫のうち,年代測定に供するジルコンとアパタイト,白雲母を全部含む試料について,偏光顕微鏡観察とEPMAを用いたBSE像により検討した.しかしながら,ジルコンは砂質のものでも最大50μm以下であったが,東京大学大気海洋研究所のナノシムスによる年代測定には可能なサイズであることを確認している.一方,アパタイトの方は砂質片岩,泥質片岩に限らずかなり大きいサイズのものも存在することが確認された.そこで,24年度にはアパタイトのU-Pb年代の可能性のみならず,フィッショントラック年代を測定し,久万層群に礫として含まれる三波川変成岩の地表付近に達した時の年代を決定する見込が立った.一方,白雲母のK-Ar年代については,ひわだ峠層の2試料について,蒜山地質年代研究所に依頼して測定を実施し,約86Ma,87Maというほとんど共通した年代が得られた.この結果は,野外に露出している三波川変成岩よりやや古いものの,ひわだ峠層が始新世とした場合に想定される年代よりは若いことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
始新世といわれるひわだ峠層の地質調査がほぼ順調に行われ,不整合露頭が確認で来たことに加え,予想以上に大きな試料を採取することができた.また,中新世の久万層群についても,従来からK-Ar,Ar-Ar年代測定が行われている瓶が森地域に加え,古岩屋でも大きな礫を採取することができたことから,2014年度に向けての年代測定の試料をほぼそろえることができた.また,そのほかに,関東山地三波川帯でも,ユニット境界の調査を開始することができ,礫と露頭を比較する上でのスタートを切ることもできた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに採取した礫について,現在は薄片の作成を進めており,その中からジルコン,アパタイト,白雲母が共通して含まれる試料について,順次年代測定を進めて行きたい.大きなジルコンが得られた場合は,アパタイトとともにフィッショントラック年代を京都フィッションとラック(株)に委託する.またその両方の鉱物を用い,東京大学大気海洋研究所のマシンタイムの都合の良い時に,ナノシムスによる年代測定を実施する.すでに大気海洋研究所から共同利用の許可が下りている.そのための試料の調製を進める.久万層群古岩屋層や瓶が森の久万層群の礫の年代との比較を含めて,ジルコン・アパタイト・白雲母の年代を決めて行きたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
年代測定を行うための委託費用が大きなウエイトを占める.京都フィッショントラックの年代測定費用として,1試料についておよそ19万円が必要となる.蒜山地質年代学研究所のK-Ar年代測定費用として,1試料について10万円が必要となる.予算の範囲内で,優先試料を選択しつつ,複数個の年代測定を進めて行く.そのほか,研磨剤,ジルコンやアパタイトの分離を行うための道具の開発,予備試料を採取するための旅費,学会発表旅費(地質学会大阪大会)などが必要とされる.なお,鉱物の分離については,礫は試料が限られているため,京都フィッショントラックに委託する費用が必要となるが,露頭から採取した試料については,大学でも分離ができるように,準備する.そのためにジルコンやアパタイトの分離を行うための道具の開発に費用を使用する予定である.
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