研究課題/領域番号 |
23540537
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高木 秀雄 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60154754)
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キーワード | 三波川帯 |
研究概要 |
本課題2年目の24年度は,四国久万層群ならびにひわだ峠層中の礫3試料から分離されたジルコンのFT年代測定ならびにK-Ar年代の追加測定を実施した.その結果,次のことが明らかとなった. ・始新統とされているひわだ峠層中の礫からは85.2±7.7Ma,中新統古岩屋層中の礫からは68.7±6.0Ma,64.9±5.8Ma という,二つの地層で誤差範囲を越えて異なる年代が得られた.ただし,両者の同じ礫から求められた白雲母K-Ar年代は,ひわだ峠層が86.6,86.8Ma,古岩屋層が81.5,83.5Maと大きな違いは認められない.このことから,ひわだ峠層が古岩屋層より地層の年代として古いという可能性は示唆されるが,それを決定づけるまでには至っていない.今後は,ひわだ峠層からの礫試料の追加とともに,ナノシムスによるU-Pb年代測定を実施して,三波川帯の上昇過程について,年代的制約から総合的に議論することが期待される. ・そのほか,長瀞高砂橋付近の関東山地三波川帯のユニット境界を挟む砂質片岩からジルコンを分離し,ナノシムスによるU-Pb年代測定を実施し,上部ユニットから90Ma前後の,下部ユニットから100Ma前後の白亜紀を示す年代が得られた.このことは,高砂橋の三波川変成岩もその原岩が四万十帯に属する可能性を示唆するとともに,低角断層を境に年代の小さなギャップがあることが明らかにされた.また,礫のフェンジャイト年代が,露頭の年代より有意に古いことも明らかとなった.つまり,三波川変成作用の年代幅は,白亜紀全体にまたがる可能性が強くなった. ・上記以外に,白亜紀に三波川変成岩が隆起して削剥レベルに達した可能性がある高知県安芸市大山岬の四万十帯の三波川変成岩礫についても地質調査を開始した.3年目の今年中には,礫の残りの年代測定を完了させる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三波川変成岩中の礫について,白雲母年代測定とともにジルコンのフィッショントラック年代測定も予定どおり実施できた.また,ナノシムスによるU-Pb年代測定も,東大大気海洋研究所のマシンタイムの制約はあるものの,年代測定の経験を積むことができた.残念なことは,ひわだ峠層中の礫のサイズが全般に小さいため,ジルコンが分離できてFT年代測定に使える試料が1つしかなかったこと,当初予定していたアパタイトは分離ができたものの,包有物などが多くてやはりFT年代測定ができなかったこと,などがあるが,こればかりは致し方ない所である.ただし,今年度にひわだ峠層を再度調査して,年代測定可能なジルコンを得たいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
・四国ひわだ峠層を再調査し,地質図を完成させるとともに,ジルコンを含む大礫~巨礫の採取を試み,測定可能・ジルコンを獲得できた場合は,早急にフィッショントラック年代測定を行う. ・上記とともにジルコンのフィッショントラック年代測定を実施したジルコンについて,ナノシムスによるU-Pb年代測定を実施する. ・高知県安芸市四万十帯の大山岬の礫岩中の礫についても採取済みであることから,ジルコンを分離して,フィッショントラック年代測定を実施する. ・以上の結果を踏まえて,論文をまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の使用計画 ・野外調査:愛媛県久万高原のひわだ峠層の分布調査と試料採取(1週間) ・ジルコンの分離とフィッショントラック年代測定(3試料程度) ・フェンジャイトK-Ar年代測定(3試料程度) ・学会発表出張,英文論文添削など
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