研究課題/領域番号 |
23540538
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研究機関 | 千葉県立中央博物館 |
研究代表者 |
熊代 浩子(岡崎浩子) 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員 (10250135)
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研究分担者 |
田村 亨 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10392630)
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キーワード | GPR(地中レーダ) / 網状砂礫州 / 安倍川 / 3次元解析 |
研究概要 |
GPR(地中レーダー)により安倍川の網状砂礫州の探査を平成24年5月16日におこなった. 安倍川は流路延長51kmで直線的に南へ流れ,河床勾配は中流部で1/200,河口付近で1/400である.河床は中流域でも巨石・粗石を多く含む石礫床で河口から4km付近で礫が中心となり,典型的な網状河川を示す.安倍川では昨年(平成23年)9月の台風15号で水位3.5m,流量3,256m立方/s(河口より4km地点の高水流量観測速報値)を記録し,このような大きな流量が計測されたのは平成14年7月洪水以来9年ぶりとなる.この洪水によって河道の平面形状も大きく変化している(静岡河川事務所,2012). 本研究では,安倍川河口から2.75km上流の静岡市駿河区静岡大橋下の左岸でみられる1つの網状州を対象として,地中レーダ探査をおこなった.探査した砂礫州は,長さは約340m,幅は約50mで,堆積物は上流から下流にかけて,大礫サイズを主とする礫から中礫まじりの細粒砂になり,州内に発達するクロスチャネルの表面には泥も堆積している.用いたレーダはSensors&Software社製PulseEkkoProで,250MHzのアンテナを使用し,縦断方向に2側線,横断方向に4側線において砂礫州の内部構造を探査した. 州は上流部(bar head)から下流部(bar tail)にかけて比高も粒径も小さくなる.横断方向では中央部が最も高く礫径も大きく,その表面には流木等のゴミが多くみられる.この州の本流側にやや粒径が小さく比高の小さい州が付加する.また,州の中にはクロスチャネルなどが入り込む.縦断方向の地中レーダ断面では平行層理が卓越し下流部では下流方向に傾いたフォセット層理が認められる.横断方向の断面では,砂礫州の本流側にチャネル構造が頻繁に認められる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GPR探査による安倍川網状州の結果は,既存の報告とよく一致するいくつかの特徴的な構造をもっている.すなわち,チャネル構造や平行層理などである.この砂礫州の台風前(H23.4)と台風通過後(H23.10)の航空レーザー測量図を比較すると,台風前にあった小さい州と州の間の網状流路が埋積され,小さい州が合体し,幅,長さともに大きな州が形成されているのがわかる(静岡河川事務所,2012).したがって,地中レーダでみられる下流方向への前進といくつかのチャネル構造はこの台風時のデューンの移動とチャネルの埋積の痕跡の可能性があり,GPR探査により砂州の堆積過程が検討できたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
安倍川は土砂供給量が多くその砂州は形態変化が激しい.したがって複数の砂礫州のGRP測定によって,今年度の結果を検証する. また,このような土砂供給による変化は水路実験でも供給量を急激に増加すると同様の変化が認められるものである.したがって,沖積河川におこっているこのような砂州形態の変化が実際にはどのようなGPRで認知される反射面を形成するのかを踏まえ,今後,水路実験でのGPR測定を計画する.
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次年度の研究費の使用計画 |
1.調査河川の砂礫堆地形のGPS調査をおこなう. 2.調査河川の砂礫堆のGPR探査をおこなう. 3.複数の側線による結果から,3次元断面を求める. 4.砂州形成過程復元のための水路実験を計画する.
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