研究課題/領域番号 |
23540540
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
荒井 晃作 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (30356381)
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研究分担者 |
井龍 康文 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00250671)
町山 栄章 独立行政法人海洋研究開発機構, 海底資源研究プロジェクト, グループリーダー (00344284)
井上 卓彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究員 (90443168)
佐藤 智之 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究員 (80555152)
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キーワード | 海洋地質 / 精密地形調査 / サンゴ礁 / 第四紀 / 宮古曽根 |
研究概要 |
本研究では,かつては琉球弧の島嶼の一部であった可能性のある沖縄島と宮古島の間の高まりにおいて,高分解能マルチチャンネル構造探査,第四紀堆積層の音響層序学的な解釈,精密地形調査,岩石採取,採泥調査とその年代決定により,1.島嶼の沈降が,いつどの様に開始したかを検証する.沈降運動は琉球弧を胴切りする方向の層運動に関連していると考えられ,断層運動の変位量や速度を求める.2.陸続きであったとされる宮古島と沖縄島の間の溝がいつから形成され,発達したかを解明する.それによって,従来の研究よりも精度の高い古地理の復元を試みる. 当該年度の研究では,研究計画に沿って,以下の通りの調査・解析を実施した. 6~7月に船舶を用いた精密測深調査の実施.そのデータの解析作業を行った.精密地形調査の結果,宮古曽根北西縁においては,水深約120 mにテラス状の地形を見いだした.この平坦面はその西の水深約130 mから比高10 m程度の斜面が存在する.さらに,調査域南西部の現在の水深約60 m(重宝曽根)には明瞭なサンゴ礁地形が認められることが分かった.サンゴ礁地形は少なくとも南北方向に1 km以上連続し,幅は500 m以上に達する.地形断面から見る礁嶺の水深は約55-60 mで,その外縁部には縁脚―縁溝系が発達する.また礁嶺内部はモート状の地形が認められた.今回見つかったこれらの高まりは,現世のサンゴ礁地形に酷似しており,後氷期の海水準変動と調査海域のテクトニクスと合わせて議論するために重要な結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は計画通り海域における調査が実施できた.当該年度の調査によって古いサンゴ礁地形を見つけ出すことができた.今回見つかった地形は,極めて明瞭なサンゴ礁地形で,従来,琉球弧における調査では氷期にはサンゴ礁が発達していなかったとする地形学・地質学的な知見を覆すものである.現在は,水深と地形のみが判明したが,これらの年代値を調べることができれば,テクトニクスに関する議論がきるものと考える. 水深120 mの付近では明瞭なサンゴ礁地形は発達していない.一方で,現在の水深で約55~60 mにサンゴ礁地形が見つかった.このサンゴ礁が後氷期の海面が急激な上昇をする時期に対応するとすれば,この地域は地質学的に安定,あるいは隆起している可能性がある. 今回の結論は今後,この地域のテクトニクスを議論する上では極めて重要な結論である.
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今後の研究の推進方策 |
実際の調査は平成24年度に完了したと言える.そこで,残された年度においては研究成果を取りまとめに重点を置く.まとめるべき成果は以下の通りである. 1.既存データ分の論文を作成して,データを公表する.重要な点は宮古曽根における宮古鞍部の沈降運動に関してである. 2.宮古曽根の55-60 m水深の沈水サンゴ礁の解析を行う.既存データとしては,地形データが主体となるので,これらを公表する. 3.次期計画の策定と,課題の拾い出し.平成24年度調査によって,サンゴ礁地形を見いだすことができた.今後はその試料を採取することが一つの課題となる.つまり,年代値を明らかにすることができれば,本研究は国際的にも非常に重要な汎世界的な海水準の変動曲線に関する重要な成果が得られる可能性が高い.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度となるため,研究成果の発表を行う予定である.特に,24年度の結果を国際誌に投稿を目指して,それに向けた支出を行うこととする.主に,論文作成のための,学会の参加費及び,それの公表のために支出する.
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