研究課題/領域番号 |
23540542
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
沢田 健 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20333594)
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研究分担者 |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (00374207)
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キーワード | 古植生解析 / 陸域環境変動 / 抵抗性高分子 / ケロジェン / 白亜紀 / バイオマーカー / 植物化石 / 熱化学分解 |
研究概要 |
本研究は、白亜紀堆積層に含まれる陸上植物由来の生物指標分子(バイオマーカー)と抵抗性高分子(ケロジェン)の分析から、長時間スケールの古植生の年代変動を高精度に復元し、さらに植生データを介して白亜紀の陸域環境変動を推定するものである。平成24年度の研究成果は以下のとおりである。 1.北海道大夕張地域に分布する蝦夷層群の堆積岩を採集した。それらを試料としてバイオマーカー分析を行い、芳香族被子/裸子植生指標(ar-AGI)を用いて古植生変動を復元した。特にCenomanian/Turonian境界付近の層準において被子/裸子植生の急激な変動を見出した。 2.植物化石の抵抗性高分子を加水分解して得られる結合態脂肪酸のC18/C16 比をReleased Fatty Acid ratio(RFA-18/16)と設定した。この指標を大夕張天狗ノ沢セクションから採取した堆積岩のケロジェン試料に応用した。このRFA-18/16指標値の変動は後背地から運ばれた植物組織の木質/草本比を示していると考えられ、さらに踏み込んで、木本性/草本性植生比(森林/草原比)を示すものと提案した。 3.キューリーポイントパイロライザーを使用して、蝦夷層群堆積岩から分離した陸上植物由来ケロジェンの熱分解(pyrolysis)分析および熱化学分解分析(thermochemolysis)を行った。熱化学分解分析ではケロジェン中の結合態脂肪酸を脂肪酸の形態で分析できるため、簡便的な結合態脂肪酸C18/C16比(RFA-18/16)分析方法になり得る。TMAHなどの反応試薬を用いた熱化学分解分析を試行しながら、加水分解など化学分解分析の結果を比較して体系的な分析方法の開発・検討を進めている。さらに、熱分解・熱化学分解分析を、時代・地域の異なる多くの種類のケロジェン試料に対して行い、分解物の組成比の多様性を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
白亜紀堆積層の陸上植物バイオマーカー分析による古植生解析は、大夕張地域の蝦夷層群においてAptianからCenomanian層準まで進み、さらに白亜紀海洋無酸素事変(OAE)2相当(Cenomanian/Turonian境界)の層準において高分解能での変動データを得る段階まで進んでいる。しかし、その上位層準の分析は手付かずの状態である。 植物起源ケロジェンの抵抗性高分子分析において、結合態脂肪酸C18/C16比(RFA-18/16)を開発し、現時点で木本性/草本性植生比の指標としての適用性を提案している。さらに植物抵抗性高分子の分解成分を使った科・属・種レベルの化学分類指標の開発・検討も進めたい。また、その抵抗性高分子の結合態脂肪酸分析の方法には、高分子の分解反応の効率、植物部位における多様性、続成変化の影響など多くの問題があり、検討が必要である。 キュリーポイントパイロライザーを用いた植物起源ケロジェンの熱分解分析および熱化学分解分析を進め、TMAHを用いた熱化学分解分析によって結合態脂肪酸指標(RFA-18/16)データが得られることがわかった。これをさらに進めて、より簡便な植物起源ケロジェン(抵抗性高分子)からの古植生解析方法を検討する。今年度において、熱化学分解分析による研究はかなり進んだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
白亜系堆積層の陸上植物バイオマーカー分析による古植生解析を、朱鞠内地域の蝦夷層群においてCenomanian層準より上位の地層において高分解能で実施する。朱鞠内地域の堆積物はきわめて未熟成の有機物を含むことから、豊富なバイオマーカーデータが得られることが期待される。植物起源ケロジェンの抵抗性高分子分析においても、朱鞠内地域の未熟成試料に対して応用し、古植生指標としての適用性を検討する。 植物起源ケロジェンの熱化学分解分析を継続し、抵抗性高分子の結合態脂肪酸ユニットに加え、結合態アルコールユニットやリグニン様フェノールユニットに着目して分解成分による古植生解析法の開発・検討を進める。また、多くの種類のケロジェンと植物化石を使った実験も行い、抵抗性高分子の分解反応の効率、植物部位における多様性、続成変化の影響などについて検討する。 次年度は最終年になるので、成果を海外で開催される国際学会(スペインでのIMOG)などで発表し、複数の研究論文を国際誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
大型機器の購入予定はない。研究費は、昨年までと同様に、消耗品代として有機地球化学分析に用いる試薬類やガラス器具類、熱分解分析のためのパイロフィルムなどの費用に使用する。交通費・宿泊費として、北海道朱鞠内地域の地質調査と堆積岩試料採取のための費用、国内・海外での学会参加のための費用として使用する(地球化学会年会(筑波大学)、 国際有機地球化学会(IMOG;スペイン))。また、論文の投稿のための費用、別刷り代としても使用する。
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