研究課題/領域番号 |
23540545
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
高橋 修 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20242232)
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キーワード | 国際研究者交流(ノルウェー) / 放散虫 / 共生藻 / 遊走子 / 被殻形成 / シリカ / 硫酸ストロンチウム / DNA |
研究概要 |
海外研究協力者であるオスロ大学K.R.Bjorklund教授のノルウェーのチームとアメリカチーム合同で,寒冷海域のソグネフィヨルドでのサンプリングをおこなった.また,本年度は,K.R.Bjorklund教授が来日し,沖縄県本部沖での亜熱帯海域でのサンプリングも合わせておこなった.これらのサンプリングにより,オスロ大学と東京学芸大学それぞれで,放散虫培養およびcDNAの増幅を試みたが,現在のところcDNAライブラリの作成には至っていない.しかしながら,下記のいくつかの新知見が得られた. 1)群体性および単体性ポリキスティネアそれぞれの遊走子の形態観察・遺伝子増幅に成功した(現在論文執筆中). 2)放散虫とその共生体の多様性と普遍性が明らかになってきた.放散虫には海域を問わず同じ種類の共生藻が共生していることがわかった(投稿中). 3)蛍光色素で,培養している放散虫の殻を染色し,被殻の形成過程が明らかになった.放散虫の殻は内から外へと階層的に成長するのと同時平行して,肥厚化による成長も同時におこなっていることがわかった(現在論文執筆中). 4)放散虫の固定した硫酸ストロンチウム結晶を単結晶として取り出すことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように,最終目的である放散虫のcDNAライブラリ作成については難航しているが,その実験の過程で付随するいくつかの新知見が得られた.これらの知見は,cDNA解析のような直接的な回答ではないが,形態的・生理学的に放散虫の殻形成の過程と普遍性を明らかにするという意味では重要な知見であった. 生物圏のストロンチウム循環に放散虫が重要な役割を演じているという仮説のもと,骨殻形成の過程やその生物学的なしくみをまず明らかにできたことが,本科研の目的である生物圏のシリカやストロンチウムの循環を考察する上での順調な進展であったと考える.
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今後の研究の推進方策 |
1)これまで得られたデータや新知見をまとめて論文を作成する(現在のところ,投稿中1本,執筆中3本いずれも英文). 2)海外研究協力者のK.R.Bjorklund教授の再招へい.沖縄にてサンプリングおよび遺伝子解析をおこなう. 3)ノルウェー・ソグネフィヨルドにて,ノルウェーチームと合同でサンプリング(予定). 4)放散虫のcDNAライブラリの作成. 5)共生藻の多様性の研究(シリカミネラリゼーションの遺伝子水平伝播についての検討)
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次年度の研究費の使用計画 |
必要と考えていた薬品類の一部購入を次年度に回したこと.ノルウェーを再度訪問する場合は旅費に加算するが,そうでない場合は予定通り遺伝子解析のための薬品購入に充てる予定.
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