研究課題
古生代末の大量絶滅に至るグローバルな海洋環境変動を解明するために,パンサラッサ遠洋域に堆積した最上部ペルム系層状チャートセクションに含まれる放散虫サイズと,チャートの化学組成や岩相との関係を検討する目的で研究を進めている.放散虫サイズの変動として,各種の平均殻サイズが,層状チャート10数層,数十万年の周期で増減することは既に明らかになっている.当該年度は,チャート試料について蛍光X線分析装置(XRF)および誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて,全岩化学分析を行った.その結果,海洋の酸化還元状態の指標となると考えられているV,Ni,Cu,Mo,Uの含有量はいずれも類似した挙動を示すことが明らかとなった.これらの元素含有量は,セクション最下位で元素含有量が高い傾向が認められ,還元的な環境であったことを示唆している.セクション中位層準では,元素によってはいくつかの変動ピークを示すものの,全体としてより酸化的な環境に移行していったと考えられる.最上部のP/T境界・黒色頁岩直下のチャートでは,これらの元素がいずれも高い値を示し,堆積した環境が還元的となったことを示している.一方,Th/U比のパターンは,上記の元素含有量のパターンのミラーイメージを示し,やはり最下位と最上位で最も還元的な環境,それ以外では基本的には酸化的な環境であったことが示唆される.これらの元素の変動と,放散虫殻サイズの変動の呼応についての検討はまだ終えられていない.今後これらの対応関係を明らかにしていく予定である.当初予想していなかった知見として,化学分析値の示す酸化還元環境の変動が,放散虫化石群集帯区分と極めてよく一致することが判明した.放散虫の構成種の大きな入れ替わりが,海洋環境変動のうち酸化還元環境に支配されている可能性が高いといえる.
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