研究概要 |
本計画では、温暖化後の地球のアナログを得るために琵琶湖のMIS1、5e堆積物を花粉分析し、モダンアナログベースの古気候定量復元をおこなうことを目的としている。 この計画に従い、本年度は、琵琶湖のMIS1、5e堆積物の花粉分析をおこなうと同時にデータ解析をおこなった。具体的には、琵琶湖のMIS1(0-10,000年前)試料としては2008年掘削のBIW08A,Bコアの0-3m部分を用い、同じくMIS5e(115,000-125,000年前)試料としてはBIW08A,Bコアの37-40m 区間を使用した。また、MIS11(420,000-430,000年前)試料としては1983年掘削の琵琶湖1400mコアの235-245m区間を使用した。 この採取データをモダンアナログ法にかけることにより、気温(℃)や降水量(mm/y)などの古気候情報を定量復元した。とくに本計画が従来の計画とちがう点は、前回の科研計画(H19-22若手A)で採取した温暖域(~年平均22℃)の現生データをモダンアナログとして追加したことである。この結果、MIS1, 5e, 11間氷期の古気候復元、とくに年平均気温の復元値を、温暖方向に7℃延長することができた。その結果、12万年前のMIS5eや43万年前のMIS11間氷期は、現在のMIS1間氷期と比べて同程度にしか暖かくないことが、かなり高い確度で立証された。さらにこれと並行して、比較対照データとしてのモダンアナログの不足を補う表層花粉調査を、伊豆諸島や愛知県、長野県などの地域に対しておこなった。 現在の温暖化理論では、北半球高緯度の氷がなくなると暴走的温室効果がすすむと説いている。グリーンランド付近に大規模な氷床がまだなかったMIS5eやMIS11の気温がなぜ現在と比べて大差ないのだろうか。この問題は現在の温暖化理論と照らしたときやや非整合的であり、今後の研究をまつ必要がある。
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