研究課題/領域番号 |
23540554
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石渡 明 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90184572)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マントルかんらん岩 / 前弧 / クロムスピネル / 付加体 / 北上帯 / 阿武隈帯 / 超丹波帯 / 蛇紋岩礫岩 |
研究概要 |
本課題「日本の古生代オフィオライトの多様性と沈み込み帯プロセス」の3年間の研究の初年度として,東北地方各地と西南日本内帯の超苦鉄質岩体及び兵庫県南部地域の付加体中の蛇紋岩礫について調査を行った。その結果,東北地方の和賀仙人,焼石岳,母体,川渡,金華山,丸森,摺上の各地域の小規模な超苦鉄質岩(主に蛇紋岩)について,スピネル残晶の化学組成を系統的に測定し,岩手県や宮城県北部の北上帯では枯渇したハルツバージャイト起源のマントルかんらん岩であり,宮城県南部や福島県の阿武隈帯ではやや肥沃なハルツバージャイト及びメルトからの集積岩起源のものが多いことがわかった。そして宮城県川渡の蛇紋岩は非常にMgに富むスピネルを含み,無水で高温のかんらん岩起源であることがわかった。この結果を従来の宮守・早池峰オフィオライトの研究及び根田茂帯や南部北上帯の堆積岩中の砕屑性黒ムスピネルの研究と比較しながら,日本の古生代オフィオライトの多様性と前弧での構造プロセスについて学生の町田怜史と共著で論文を執筆し,岩石鉱物科学誌に投稿した。また,兵庫県南部地域のペルム紀付加体である超丹波帯の地層から,蛇紋岩礫岩を発見し,その蛇紋岩の顕微鏡観察とスピネルの化学分析を行った。スピネルの特徴的な形態と化学組成から,この蛇紋岩は大江山オフィオライト起源であることがわかり,これについては平成24年5月の地球惑星科学連合大会で菅森義晃と共著で発表する。この他,北海道の空知・神居古潭帯のピクライトについて市山祐司らと共同研究を行い,それらがジュラ紀巨大火成岩区(LIP)におけるコマチアイトと同程度ないし更に高温のマグマ活動によることを明らかにし,彼らと共著で米国地質学会のGeology誌に論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,上の研究実績の概要に示したように,東北日本や西南日本各地の超苦鉄質岩体ならびに堆積岩中の超苦鉄質砕屑物について順調に現地調査と標本採集および鉱物化学分析を行うことができ,既にこの課題の研究について国際誌や国内誌への論文発表や学会発表を行うことができた。本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,データが不足している阿武隈帯の超苦鉄質岩類の研究,北部北上帯の付加体砂岩中のクロムスピネル砕屑粒子の研究,上越帯の苦鉄質・超苦鉄質岩類の研究などを行っていく予定である。また,今年度はオーストラリアで万国地質学会議(IGC)があるので,この会議に参加して研究発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は当初計画の通り上記調査の旅費,および岩石試料の薄片製作や化学分析のための消耗品費に用いる計画である。
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