研究課題
本課題「日本の古生代オフィオライトの多様性と沈み込み帯プロセス」の3年間の研究の第2年度として,東北地方や西南日本内帯の超苦鉄質岩体及び付加体中の蛇紋岩礫について調査を行った。その結果「クロムスピネルの化学組成から推察する東北地方の小規模超苦鉄質岩体のテクトニクス」という和文論文を岩石鉱物科学42巻1-11ページ(2013年1月30日発行)に発表することができた.この研究により,岩手県や宮城県北部の北上帯では枯渇したハルツバージャイト起源のマントルかんらん岩が卓越するが,宮城県川渡の蛇紋岩は非常にMgに富むスピネルを含み,無水で高温のかんらん岩起源であることがわかった.宮城県南部や福島県の阿武隈帯については,やや肥沃なハルツバージャイトや超苦鉄質集積岩が産することがわかっていたが,データが少なかったので本年度に詳しい追加調査を行った.その結果,非常に鉄に富む超苦鉄質集積岩が多産することがわかり,それらの成因を調査中である.また,兵庫県南部地域のペルム紀付加体である超丹波帯の地層から発見した蛇紋岩礫岩については,大江山オフィオライト起源であることが確実になり,この結果は平成24年5月の地球惑星科学連合大会で菅森義晃と共著で発表し現在英語論文を執筆中である。この他,モンゴルの付加体緑色岩から鉄ピクライトを発見し,日本の付加体緑色岩との比較を論じた英語論文を学生のE. GanbatとともにJour. Min. Petr. Sci.誌に投稿し,2012年12月の米国地球物理連合秋季大会(ポスター)及び2013年4月の欧州地球科学連合(EGU)大会での招待講演(口頭)で発表した.また,2012年8月の万国地質学会議(ブリスベン)では地球上の超苦鉄質岩について総括的な講演を行った.これは同年9月に共立出版から出た教科書「火成作用」の私が執筆した苦鉄質・超苦鉄質岩の章の内容に基づく.
2: おおむね順調に進展している
本年度は,上の研究実績の概要に示したように,東北日本,西南日本,モンゴルなど,各地の超苦鉄質岩体,堆積岩中の超苦鉄質砕屑物,付加体緑色岩などについて順調に現地調査と標本採集および鉱物化学分析を行うことができ,既にこの課題の研究について国際誌や国際学会,国内誌への論文発表や学会発表を行うことができた。本研究はおおむね順調に進展していると言える。
今後は,データが不足している阿武隈帯の超苦鉄質岩類の研究,北部北上帯の付加体砂岩中のクロムスピネル砕屑粒子の研究,上越帯の苦鉄質・超苦鉄質岩類の研究などを行っていく予定である。また,今年度も国内・国外の学会で研究成果を発表するとともに,日本の地質に関する英語の教科書に日本の超苦鉄質岩,オフィオライト,付加体緑色岩に関するまとめを執筆する予定である.
次年度の研究費は当初計画の通り上記調査の旅費,および岩石試料の薄片製作や化学分析のための消耗品費に用いる計画である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (4件)
岩石鉱物科学
巻: 42 ページ: 1-11
地質学史懇話会会報
巻: 39 ページ: 3-10
Geology
巻: 40 ページ: 411-414
地学雑誌
巻: 121 ページ: 460-470
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/geo/ishiwata/index_j.htm
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/geo/
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http://db.tohoku.ac.jp/whois/detail/212a97a7c5a134eb488dc4fe92ee54a9.html