研究課題/領域番号 |
23540555
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 克哉 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (40335229)
|
キーワード | 地殻溶融過程 / 物理モデル / 島弧火山 / マグマ生成 / 物理モデル / マグマ含水量 |
研究概要 |
大陸地殻縁の沈み込み帯においては,玄武岩質から流紋岩質まで幅広い組成のマグマが活動し,それらマグマの発生にとって地殻溶融プロセスが重要であると考えられる.本研究では,物理モデルと実際の火山の噴火史およびマグマ組成のデータのコンパイルにより,地殻溶融によるマグマの生成量,組成,生成時間を理解し,地殻内過程が関与したマグマの多様性生成の物理プロセスを定量的に理解することが目的である. 前年度までに,地殻溶融の物理モデルによる数値実験を行うために,地殻とマグマに関する溶融関数の作成を行い,さらに,従来の高温マグマの貫入による地殻溶融の一次元モデルモデルの拡張を行い,繰り返しのマグマ貫入,マグマ結晶化に伴う水の吐き出しの効果を考慮した計算機コードを作成した. 平成24年度では,このコードを用いて,地殻初期温度,貫入する高温マグマの初期水量,貫入率,一回の貫入厚さをパラメータとした数値計算を系統的に行った.その結果,地殻溶融により珪長質マグマが卓越するか,苦鉄質マグマが卓越するかを決定するかを決定する重要なパラメータは,地殻の初期温度と高温マグマの一回の貫入厚さであることを見出した.これはこれまでにない新たな知見である. また,実際の火山のデータコンパイルにおいて,カルデラ火山を中心としたの文献調査を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の目標は,(1)地殻溶融モデルを用いた実際の計算を行うこと,(2)結晶沈降などの効果をモデルに加味すること,(3)実際の火山を対象にデータのコンパイルをさらに進めること,であった.(1)に関しては当該年度の目標を達成している.(2)に関しては,(1)の結果がかなり複雑であり,現段階においてさらに複雑な過程を考慮することは根本の理解を混乱させいたずらに状況を複雑化させると考え,現段階では現状のコードを用いて理解を深めることを目的とすることとし,予定を変更して行わなかった.(3)に関しては,予定通り進んでいる.(2)に関する予定変更はあったものの,本研究はおおむね順調に推移していると評価できる.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果を基にして,数値計算機コードとその結果の妥当性を厳密に検討し,物理モデル,数値計算結果をまとめ,固液分離が起こらない場合の,地殻溶融過程によるマグマの生成に関して,重要な素過程を理解し,まとめを行う. また,前年度に引き続いて,天然火山の地質学的,岩石学的データのコンパイルを行う.最終年度では,文献調査を継続するとともに,コンパイルデータのまとめを行い,島弧火山の長中期進化の経験則を理解する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
成果の発表,および研究情報収集のための学会などへの出張旅費として使用する予定である.
|