研究課題/領域番号 |
23540556
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐野 孝好 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教 (80362606)
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研究分担者 |
尾崎 典雅 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70432515)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高圧物性実験 / レーザー衝撃圧縮 |
研究概要 |
近年目覚しい進歩を遂げている高強度レーザー衝撃圧縮の手法を用いて、クォーツのオフユゴニオ計測実験を行い、クォーツを『テラパスカルの極超高圧域にわたる衝撃圧縮標準物質』として確立する。標準物質の反射衝撃圧縮曲線や断熱膨張曲線の振る舞いは、衝撃圧縮計測において決定的に重要であるにも拘らず、これまで実験的検証の取り組みがなされていない。そこで本研究では、新しい相対的状態方程式計測法のアイデアと、独自に開発する"極超低密度"エアロゲル(数mg/cc)などを用いた高精度オフユゴニオ計測実験を通じて、クォーツを『極超高圧まで利用可能な衝撃圧縮状態方程式標準物質』として確立する。そして、確立された標準物質を用いて、水素をはじめ現代科学の最重要物質の超高圧データを刷新することを究極の目標とする。本年度は、アルミと衝撃圧縮特性が良く一致するフッ化リチウムを用いて、時間分解された衝撃波速度を取得し、それに基づいてクォーツの圧縮状態を決定する新しい高精度の"Relative"なEOS計測を行う。この新しい方法によって、クォーツの衝撃圧縮曲線の再検証を行い、同様にサファイア、極超低密度エアロゲルの衝撃圧縮曲線を明らかにした。特に、サファイアの衝撃圧縮実験では、減衰衝撃波を活用して、相転移近傍の圧力-温度関係を広範囲に渡って取得することに成功した。サファイアの解離もしくは電離に伴い、温度上昇が抑制されている様子がはっきりと見られ、TPa領域におけるサファイアの貴重な物性データとなった。現在は、第一原理分子動力学シミュレーションと比較しながら、物理状態の詳細解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標であった、サファイアとエアロゲルの衝撃圧縮実験を実施することができ、レーザー衝撃圧縮でしか達成できない極超高圧領域での物性データの取得に成功した。それと平行して、標準物質であるクォーツの圧力、密度、温度、反射率の同時計測を行い、クォーツの金属化に関する基礎データも数多く得ることができた。これらのデータは、クォーツのオフユゴニオ状態方程式の確立に不可欠なものである。特に、サファイアに関しては、金属化相転移と予想される領域において、圧力・温度・反射率の計測に成功している。現在は投稿論文にまとめるため、レーザー実験結果だけでなく、理論シミュレーション結果も含めて、サファイアの高圧物性状態の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、クォーツの反射衝撃圧縮曲線を求めるために、クォーツ結晶にサファイアを接触させて固定し、クォーツからサファイアに衝撃波が入射する直前のクォーツ衝撃波速度と直後のサファイア衝撃波速度の2つを計測によって求める。本年度に明らかにしたクォーツとサファイアの衝撃圧縮曲線に基づいて、クォーツの反射衝撃圧縮曲線のパスを正確に決定する。広い圧力・温度領域において、熱圧力成分を支配する熱力学パラメータであるグリュナイゼンパラメータを実験的に推定し、反射衝撃圧縮曲線の実験データと理論との突き合わせを行う。実験の実施には、引き続き大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの激光XII号レーザーを利用する。既に、共同利用実験の申請を行い、来年度の実施課題として採択されている。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に用いる試料(高純度単結晶など)は、光学的な測定のために非常に清浄な光学的鏡面で、かつ自由表面での多波長反射防止膜処理などを施す必要がある。シングルショットベースの実験データクォリティは、近年ターゲットに依存する部分が大きく、最適化された品質の高いサンプルの準備が絶対的に必要である。また、多角的で詳細な診断のために光学素子やフィルターなどが十分量必要であり、さらに高強度レーザー実験では、素子の劣化が通常に比べて早いため、これらに費用を計上しなければならない。以上のような理由から、消耗品費は本研究の遂行には必要不可欠であり、次年度の研究費でも購入することを予定している。また、学会等での成果報告を積極的に行うための旅費として、国内2件、外国1件を予定している。さらに、論文発表関連費用も計上しておく必要がある。
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