研究課題/領域番号 |
23540556
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐野 孝好 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 助教 (80362606)
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研究分担者 |
尾崎 典雅 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70432515)
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キーワード | レーザー衝撃圧縮 / 高圧物性 / 状態方程式 |
研究概要 |
近年目覚しい進歩を遂げている高強度レーザー衝撃圧縮の手法を用いて、クォーツのオフユゴニオ計測実験を行い、クォーツを『テラパスカルの極超高圧域にわたる衝撃圧縮標準物質』として確立する。標準物質の反射衝撃圧縮曲線や断熱膨張曲線の振る舞いは、衝撃圧縮計測において決定的に重要であるにも拘らず、これまで実験的検証の取り組みがなされていない。そこで本研究では、新しい相対的状態方程式計測法のアイデアと、独自に開発する“極超低密度”エアロゲル(数mg/cc)などを用いた高精度オフユゴニオ計測実験を通じて、クォーツを『極超高圧まで利用可能な衝撃圧縮状態方程式標準物質』として確立する。そして、確立された標準物質を用いて、水素をはじめ現代科学の最重要物質の超高圧データを刷新することを究極の目標とする。 本年度は、昨年度に引き続き、レーザー衝撃圧縮に特徴的である減速衝撃波を利用したクォーツとサファイアの状態方程式計測を実施した。この方法は、一回の実験でユゴニオ曲線上にある複数の状態を一度に計測できるという効率的な実験である。特に集中的に行ったサファイアの衝撃圧縮実験では、相転移近傍の圧力-温度関係を広範囲に渡って取得することに成功した。サファイアの解離もしくは電離に伴い、温度上昇が抑制されている様子がはっきりと見られ、テラパスカル領域におけるサファイアの貴重な物性データとなった。現在は、第一原理分子動力学シミュレーションと比較しながら、物理状態の詳細解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった、サファイアの衝撃圧縮実験を実施することができ、レーザー衝撃圧縮でしか達成できない極超高圧領域での物性データの取得に成功した。それと平行して、標準物質であるクォーツの圧力、密度、温度、反射率の同時計測を行い、クォーツの金属化に関する基礎データも数多く得ることができた。継続的に続けている減速衝撃波実験によるこれらのデータは、クォーツのオフユゴニオ状態方程式の確立に不可欠なものである。特に、サファイアに関しては、金属化相転移と予想される領域において、圧力・温度・反射率の計測に成功している。現在は投稿論文にまとめるため、レーザー実験結果だけでなく、理論シミュレーション結果も含めて、サファイアの高圧物性状態の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、クォーツの反射衝撃圧縮曲線を求めるために、クォーツ結晶にサファイアを接触させて固定し、クォーツからサファイアに衝撃波が入射する直前のクォーツ衝撃波速度と直後のサファイア衝撃波速度の2つを計測によって求める。本年度に明らかにしたクォーツとサファイアの衝撃圧縮曲線に基づいて、クォーツの反射衝撃圧縮曲線のパスを正確に決定する。広い圧力・温度領域において、熱圧力成分を支配する熱力学パラメータであるグリュナイゼンパラメータを実験的に推定し、反射衝撃圧縮曲線の実験データと理論との突き合わせを行う。 実験の実施には、引き続き大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの激光XII号レーザーを利用する。既に、共同利用実験の申請を行い、来年度の実施課題として採択されている。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に用いる試料(高純度単結晶など)は、光学的な測定のために非常に清浄な光学的鏡面で、かつ自由表面での多波長反射防止膜処理などを施す必要がある。シングルショットベースの実験データクォリティは、近年ターゲットに依存する部分が大きく、最適化された品質の高いサンプルの準備が絶対的に必要である。また、多角的で詳細な診断のために光学素子やフィルターなどが十分量必要であり、さらに高強度レーザー実験では、素子の劣化が通常に比べて早いため、これらに費用を計上しなければならない。以上のような理由から、消耗品費は本研究の遂行には必要不可欠であり、次年度の研究費でも購入することを予定している。また、学会等での成果報告を積極的に行うための旅費や、論文発表関連費用も計上している。
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