研究課題
本研究では、クォーツをテラパスカルの極超高圧域にわたる衝撃圧縮標準物質として確立するために必要となる、サファイアの高圧物性データの計測をレーザー衝撃圧縮実験を用いて行ってきた。サファイアは比較的高い圧力まで透明なため、窓材として使われる場面も多い。また、サファイアのAl-Oの結合エネルギーが、水素分子におけるH-Hと同程度であるため、圧力による解離や金属化のプロセスに類似性があることが期待されている。したがって、ユゴニオ上で金属化が予測されている400GPa以上の高圧領域における、サファイアの温度や反射率を詳細に調べることは非常に意義深いと考えている。本研究による実験では、サファイアのユゴニオデータとして、800Gpaから1.5Tpaの領域で新たに5点を取得できた。得られたユゴニオデータは過去のレーザー実験とも、標準的な状態方程式モデル(Sesameモデル)の結果とも調和的な結果であった。一方、減衰衝撃波を利用した解析では、衝撃波速度が18-25km/sの範囲での、温度及び反射率の計測に成功した。これは圧力範囲としては、およそ600GPaから1.2TPaに相当する。ちょうど600GPa辺りから衝撃波面からの反射率が上昇し始め、1.2TPaでは15%にまで達している。面白いことに、600GPaから1TPaでは、温度がほぼ一定で15000Kとなっていた。これは、この領域でも温度の上昇を示しているSesameモデルとは全く一致していない。この理由としては、Sesameモデルが解離過程を考慮していないことが考えられる。今後は、状態方程式の理論モデルとの比較だけではなく、さらに第一原理分子動力学シミュレーションの結果も加えてながら、TPa領域でのサファイアの物性変化について考察していきたい。
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Physics of Plasmas
巻: 20 ページ: 122703 (11 pp.)
10.1063/1.4840375