研究課題
地球深部に沈み込む海洋プレート中に存在すると考えられる、含水マグネシウムケイ酸塩高圧(DHMS)相中の水素原子位置を精密決定する目的で、川井型マルチアンビル高圧装置による合成を行った。中性子線回折において十分なシグナルーバックグラウンド比のパターンを得るためには、放射光X線回折の数十倍の試料体積が必要である。そこで、一度のRunにつき最大約100 mgの粉末試料を回収できるセルアセンブリを開発し、15GPa、900-1100°Cの条件で重水素化したPhaseE粉末を得た。本研究課題で立ち上げたラマン分光装置での測定により、回収試料は軽水素のコンタミネーションが十分に小さく、水素分布も均質であることを確認し、この粉末試料を中性子の吸収が小さいTiZr合金、あるいはバナジウム製の容器に密封して、J-PARC MLFのBL19(TAKUMI)及び、BL20(iMateria)にてパルス中性子線を照射し回折パターンを取得した。得られた中性子回折パターンの散乱強度はバナジウムの非干渉性散乱パターンにより規格化した結果、非常に平坦なバックグラウンドを得ることができた。この回折パターンのリートベルト解析から、重水素化phaseEの結晶構造中では、従来C軸方向に配向していると考えられていたOD結合が、C軸から傾斜していることが明らかになり、MgO6八面体からなるシート間に水素結合が存在する可能性が示唆された。現在、PhaseEの含水量とOD結合の傾斜角との関係の解析を進めている。
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High pressure Research
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American Mineralogist
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