研究課題/領域番号 |
23540566
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
鈴木 敏弘 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 技術研究副主幹 (40235974)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ザクロ石 / 珪酸塩メルト / 超高圧 / 元素分配 / 微量元素 |
研究概要 |
アルカリ玄武岩に希土類元素など26種の元素をそれぞれ約200ppm加えた試料を作成した。この試料を用いる事により、3~20万気圧までの圧力範囲で、鉱物-珪酸塩メルト間の元素分配係数を測定する事が出来た。珪酸塩メルトと共存する鉱物は、12万気圧まではザクロ石と単斜輝石であったが、15万気圧ではザクロ石のみとなった。さらに圧力を上げて18万気圧になるとザクロ石+スティショバイトとなり、20万気圧ではこれらの鉱物に加えてK-ホランダイトが珪酸塩メルトと共存する事がわかった。ザクロ石は今回実験を行った全ての圧力で珪酸塩メルトと共存していたので、ザクロ石-珪酸塩メルト間の分配係数とイオン半径の相関関係について、圧力依存性を明らかにする事に成功した。得られた結果を解析し、価数の異なるイオンごとに分配係数が最大値を示すイオン半径(ピーク半径)を求めたところ、1価イオンではピーク半径が圧力の上昇とともに著しく増加する事が明らかになった。一方、2価イオンのピーク半径は圧力が増加しても殆ど変化せず、3価イオンの場合は圧力の上昇とともにピーク半径が僅かに減少する傾向が見られた。単斜輝石-珪酸塩メルト間の分配係数についても、測定できた圧力範囲はやや狭いが、ザクロ石の場合と同様な傾向が観察された。このようにイオンの価数ごとにピーク半径の圧力依存性が異なるのは、各価数のイオン群の圧縮率が異なる事が原因と考えられる。今後は、各価数イオンのピーク半径の圧力変化量をより詳しく測定し、定量的な解析へと展開する事を目標としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初期段階では、LA-ICP-MSを用いて微量元素分析を行うために必要な結晶の大きさ、及び元素濃度を得るための実験条件を確立する事が初期の課題であった。本年度の玄武岩の融解実験において、これらの目標が達成され、最高20万気圧までの圧力範囲でザクロ石-珪酸塩メルト間の元素分配係数を測定する事に成功した。この結果を用いて、測定圧力範囲を拡大するとともに、ザクロ石以外の鉱物の分配係数の測定へと研究を展開する事が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
ザクロ石-珪酸塩メルト間の元素分配係数測定から得られた実験条件などの知見を基に、今後はは他の鉱物と珪酸塩メルト間の元素分配測定へと研究範囲を拡張する。これまでに得られた結果から、1価イオンの分配係数で特に大きな圧力依存性が認められたため、今後の研究においても1価イオンの測定が重要となる。しかし、ザクロ石-珪酸塩メルト系では、分配係数が正確に求る事が可能な1価イオンはLi,Na,Kだけで、イオン半径の大きなRb,Csについてはザクロ石中の濃度が非常に低いために得られた分配係数の誤差が大きかった。そこで、今後はRbやCsなどサイズの大きなイオンが入りやすい、Ca-perovskiteやMerwiniteなどCaが主成分である鉱物と珪酸塩メルト間の元素分配係数の圧力依存性を測定することにより、1価イオンの分配係数の圧力依存性について、より詳しく測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の年度においても、超高圧実験に必要な超硬合金アンビル、MgO圧力媒体などの消耗品の購入等に研究費を充てる。
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