最終年度は15GPa以上の圧力で、Ca-Perovskite、Mg-Perovskiteの元素分配挙動を測定した。Ca-Perovskiteでは12配位サイトに対応する大きなイオン半径の位置に分配係数の極大が現れた。一方Mg-Perovskiteの場合、4価イオンの元素分配挙動は他の鉱物とは異なる特徴的なパターンを示したが、他のイオン群については、Garnetと類似した元素分配挙動をしめした。昨年度までに行ったGarnet等の研究では、微量元素分析に必要十分な大きさの結晶を作成する事が出来たが、同じ手法を用いてもPerovskiteの場合には十分な大きさの結晶を得ることが難しく、1つの圧力でしか測定が出来なかった。しかし、昨年度までに行ったザクロ石やMerwiniteの元素分配挙動に対する圧力効果の研究結果と同様に、分配係数曲線のピーク位置が高圧下で移動することが確認できた。 従来の研究では、元素分配挙動は圧力が変わってもほぼ一定として扱われる事が多かった。特に、各元素の分配係数の相対的大小関係には変化がないと考えられてきた。しかし本研究の結果、分配係数の大小関係が逆転する事が明らかになった。特にその変化は1価イオンで著しく、KやRbのように常圧では鉱物中に入る事はほとんど無い元素が、超高圧下では他の元素よりも分配係数が大きくなり得る事が明らかになった。このため、本研究の結果をマントル最下部まで外挿すると、Ca-Perovskite中にRbが濃集している可能性が出てきた。この結果はRbの放射壊変によってSr同位体比にも影響が現れることを示唆している。
|