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2012 年度 実施状況報告書

SIMSによる初期太陽系における親鉄性元素の分別に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23540567
研究機関東京大学

研究代表者

比屋根 肇  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70192292)

研究分担者 森下 祐一  独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報部門, 研究グループ長 (90358185)
キーワード二次イオン質量分析計 / 親鉄性元素 / 元素分別 / 隕石 / 原始太陽系星雲 / 難揮発性包有物 / 同位体異常
研究概要

本年度は、白金族元素を含む多くの親鉄性元素について、二次イオン質量分析計(SIMS)による定量分析の基礎実験をおこなうとともに、実際の隕石試料中の金属粒子に対する分析を試みた。標準試料としては、昨年度から準備していた、鉄が主体で数個の親鉄性元素を1%程度ずつ含む合金標準試料を用いた。一次イオンとして酸素イオンビームを用いて合金試料を分析し、SIMS分析に不可欠な「相対感度係数」を多くの親鉄元素について求めることができた。
実際の試料の分析については、まず、マーチソン隕石から見つかった大きなマグネシウム同位体分別を示す二つのヒボナイト包有物中の超難揮発性金属粒子について詳しい分析をおこなった。金属微粒子はミクロンサイズで、SIMSではスパッタリングにより失われる可能性があるため、SEM-EDSにより分析した。その結果、白金族元素を含む超難揮発性金属元素のパターンは、ロジウムより難揮発性の元素についてほぼフラットな太陽組成のパターンを維持しており、鉄とニッケルのみが欠乏していることがわかった。このパターンを説明するため、金属元素の蒸気圧データをもとに蒸発のモデル計算をおこない、金属微粒子の生成条件を推定した。結果は摂氏1600度以上の高温での蒸発と整合的であった。また、これらの包有物に対してカルシウム同位体、チタン同位体の分析をおこなった結果、いずれも48Ca, 50Tiに同位体異常が見られることがわかり、いわゆるFUNと呼ばれる特異な包有物に属することが明らかになった。
次に、非常に始原的なY-81020 隕石(CO 3.05)中のコンドルール内の金属粒子について、酸素イオンビームを用いたSIMSによる分析を試み、分析手法の検討をおこなった。その結果、多くの親鉄性微量元素が検出可能であることが確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度力を入れた合金標準試料の作成が功を奏し、非常に多くの親鉄性微量元素についてSIMSによる定量分析が可能になった。SIMS分析における相対感度係数を求める作業も順調に進んでいる。また、実際の隕石試料の分析についても、非常に始原的なY-81020隕石を用いてコンドルール中の金属粒子の分析を試み、多くの親鉄性元素のピークが検出可能であることを明らかにした。
ただし、分析上改善すべき点も見えてきた。本研究では分析対象とする元素が非常に広い質量範囲に及ぶため、マグネットのヒステリシスが無視できず、分析する質量範囲に応じてピークの正確な位置を決め直す必要があることである。しかしこの問題点は、分析対象のすべての元素を微量に含むスタンダードをひとつ準備することで解決することがわかり、さっそく新スタンダードの作成準備をおこなっている。新スタンダードができれば、SIMS分析を非常に効率化することができる。
超難揮発性の金属微粒子を含んだマーチソン隕石のヒボナイト包有物については、蒸発のモデル計算をおこない生成条件を議論したほか、カルシウム・チタン同位体分析にも取り組み、それら包有物の特徴と生成環境について理解を深めた。その成果は国内外の学会で発表したほか、論文を準備中である。以上の経過を総合すれば、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。

今後の研究の推進方策

まず、親鉄性元素のピーク位置決め用のスタンダードを新たに作成し、SIMS分析の効率化を図る。次に、セシウム一次イオンビームを用いたSIMS分析をおこない、その条件での各親鉄性元素の鉄に対する相対感度係数を測定する。酸素イオンビームおよびセシウムイオンビームを用いた分析を実際の隕石試料に応用し、隕石中の金属粒子に対して、ほとんどの親鉄性元素について定量分析をおこなっていく。とくにコンドルール中の金属粒子、CAI中の金属粒子などに注目しつつ分析を進める。また、希土類元素分析を同時におこなうことにより、親鉄元素と親石元素における分別パターンの違いが見えてくる可能性がある。さらに同位体分析を並行しておこなうことにより起源物質についての情報を得る。これらの結果を総合することにより、原始太陽系星雲内における親鉄性元素分別の様子を明らかにし、原始太陽系星雲の温度構造、物質の移動、物質進化に関して考察を深める。

次年度の研究費の使用計画

主要な研究費の使途は、物品費と旅費である。物品費としての主な使途は、SIMS関連の消耗品費、標準試料(合金)の作成費、隕石など研究試料の購入費、薄片作成等に関連する消耗品費等である。旅費は、東京大学から分析装置のある産業技術総合研究所(つくば市)までの旅費、および学会等への旅費として使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] 二次イオン質量分析計によるマーチソン隕石中のヒボナイト包有物のマグネシウム同位体分析

    • 著者名/発表者名
      佐々木翔吾、比屋根肇、藤谷渉、高畑直人、佐野有司、森下祐一
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2012年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ、千葉県
  • [学会発表] 大きなマグネシウム同位体分別を示すヒボナイト包有物中の難揮発性金属粒子

    • 著者名/発表者名
      福田航平、比屋根肇、佐々木翔吾
    • 学会等名
      日本地球化学会年会
    • 発表場所
      九州大学箱崎キャンパス、福岡県
  • [学会発表] Ultra-refractory metal grains in hibonite-bearing inclusions with highly fractionated Mg isotopes.

    • 著者名/発表者名
      Fukuda K., H. Hiyagon, S. Sasaki, W. Fujiya, N. Takahata, Y. Sano and Y. Morishita
    • 学会等名
      NIPR Symposium on Antarctic Meteorites
    • 発表場所
      国立極地研究所、東京都立川市
  • [学会発表] An ion microprobe study of FUN-like hibonite-bearing inclusions from the Murchison (CM2) meteorite.

    • 著者名/発表者名
      Fukuda K., H. Hiyagon, S. Sasaki, W. Fujiya, N. Takahata, Y. Sano and Y. Morishita
    • 学会等名
      44th Lunar and Planetary Science Conference
    • 発表場所
      Woodlands, Texas, U.S.A.
  • [学会発表] ヒ ボナイト包有物を用いた初期太陽系の同位体的研究

    • 著者名/発表者名
      福 田航平, 比屋根肇, 佐々木翔吾, 藤谷渉, 高畑直人, 佐野有司, 森下祐一
    • 学会等名
      日本質量分析学会同位体比部会
    • 発表場所
      佐勘、仙台市、宮城県

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公開日: 2014-07-24  

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