研究課題/領域番号 |
23540570
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
向川 政治 岩手大学, 工学部, 准教授 (60333754)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プラズマ / 自己組織化 / プラズマフォトニック結晶 |
研究概要 |
本研究では、マイクロギャップ誘電体バリア放電を用いて、空間対称性を有し局在性の高い自己組織構造である散逸ソリトン(Dissipative Soliton)を生成し、この安定性の向上と持続時間の増大化を目的としている。また、この自己組織構造をプラズマフォトニック結晶とみなし、プラズマ屈折率の周期構造をマイクロプラズマの自己組織化で実現し、電磁波制御の効果を検証する。 平成23年度の研究では、マイクロプラズマの自己組織構造が安定化する条件を探るため、プラズマの高密度化・高集積化を試み、実験的に調査した。また、珪酸ビスマス(BSO: Bismuth Silicate) のポッケルス効果を用いた誘電体表面電荷測定における電荷密度の時間発展の測定と、絶対値の精度向上を試みた。 プラズマの高密度化には、誘電体バリアの静電容量を誘電体の厚さで制御し、プラズマへの投入エネルギー密度の増加を試みた。ギャップ長140μmのマイクロギャップヘリウムプラズマでは、プラズマへの投入エネルギーは誘電体厚の減少に伴って増大し、誘電体厚530~140μmの減少に対し、電子密度は2.4~9.2×10e9 cm-3 と増加する。また、このときに現れる六角パターンは、フィラメントの直径にはほとんど変化がないが、誘電体厚の減少に伴ってフィラメント間の距離が減少し、構造は微細化することがわかった。 BSOによる誘電体表面電荷密度の測定では、広く用いられている電荷密度の計算方法を再検討し、被測定レーザー光と参照光の扱いと、誘電体表面の電荷が発する電気力線の構造を適正に評価することで、表面電荷の時間発展波形と放電電流波形の間の整合性は高まり、両実験に基づく電荷密度の絶対値は良い一致を示すようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置・実験室や、その他のインフラは整っているので、研究が極端に遅れる理由が特にない。
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今後の研究の推進方策 |
科研費申請時の当初計画では、放電維持時間を延ばすための実験と、反応拡散方程式を用いての自己組織構造の数値計算は、年度ごとに実施項目を分けたが、実験と理論計算のシナジー効果を期待して、平成23年度から同時進行させている。本研究の先行研究(若手研究(B))からの継続課題である、BSOを用いた誘電体表面電荷の測定法の精度が高まったが、この結果を活かした数値計算法を模索する。平成23年度には、散逸ソリトンの正味の維持時間を長くするための方策として、マイクロギャップのギャップ間容量Cgとプラズマ抵抗Rpの変化によって制御することを試みたが、これには技術的な限界がみえてきたので、マイクロギャップの直列化・並列化と、放電のタイミングの外部回路による制御を、平成24年度に前倒しして実施する。電源周波数を高くする計画と、自己組織構造への電磁波の導入は、目下のところ、必要な実験装置の導入が困難であるため、当面は最終年度に持ち越すことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使用は当初計画通りとし、物品費、旅費、論文投稿料に充てる。
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