研究課題/領域番号 |
23540571
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
湯上 登 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60220521)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | レーザー / プラズマ / テラヘルツ / 電磁波 |
研究概要 |
一般にテラヘルツ電磁波を発生するには,光伝導アンテナ(Photo-conductive antenna),通称PC アンテナが用いられる.これは低温成長させたガリウム砒素基板上に対向させた電極を設置し,その電極間にバイアス電圧を印加する.その状態で電極間にチタンサファイアレーザーなどの短パルスレーザーを照射することにより,電極間には光伝導電流が流れる.この電流の立ち上がり時間がピコ秒オーダーとなるため,それに対応する電磁波の発生周波数はテラヘルツ帯となる.このアンテナにより高繰り返しのテラヘルツ波の発生も可能である.しかしながら,このPCアンテナには大きな欠点がある.つまり初期の印加電圧を大きくできないため,電極間に流れる電流が制限され,結果的には大出力のテラヘルツ電磁波の発生は期待できない.この欠点を克服するために我々はプラズマアンテナを提案した.電磁波の周波数はプラズマ密度の時間変化に依存し、つまり、発生電磁波の周波数はレーザーパルス幅に依存することが示唆された. これまでの実験で、ガス密度やレーザー強度などは実験パラメーターとして変化させることができるが、レーザーのパルス幅は、レーザー装置固有の値で変化することはしていなかった.パルス幅100 fs程度の超短パルスレーザーでは、グレーティングを調整することにより、パルス幅を長くすることは可能であるが、集光レーザー強度が下がるため、一般には行われない)特に、パルス幅を短くすることは困難である.過去2年間、レーザーパルス幅を短くするために、中空ファイバー中をチタンサファイアレーザーを伝搬させ、その非線形効果により、100 fs のパルス幅を 30 fs に短縮することが達成された.このレーザーパルスを用いて本格的なテラヘルツ電磁波発生の実験に期待されている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に示したように、今回の実験のポイントは、レーザーのパルス幅を変化させることである.そのために、提案では中空ファイバーを用いることを書いている.これまでの研究の結果や経験から容易に中空ファイバーにレーザーを通すことが可能であると考えていたが実験装置の変更を行った結果それが容易ではなかった.しかしながら、いくつかの技術的改良を加えることにより、安定に100 fs のレーザーパルスが 30 fs にすることができるようになった. 今後は、高電圧が印加された電極にそのレーザー光を導き、テラヘルツ電磁波の発生実験を行い、通常の手法、つまりPCアンテナを検出器として、発生した電磁波の周波数を観測する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
初年度でレーザーのパルス幅は初期に予定していた30 fs に達したので、今後はこのレーザー光で実験を行うだけである.申請時に書いたことと特に変更はない.申請時に予定していたNevada大学Reno校の千徳靖彦教授とのシミュレーションによる共同研究を開始する.用いるコードは2次元の粒子コードを予定している.
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度の予算では、レーザー用の光学部品の購入と学会への旅費を予定している.
|