本研究はプラズマ中に生成された少量の不安定分子をテラヘルツ(THz)領域キャビティリングダウン(CRD: Cavity Ring-Down)法を用いた測定手法を確立することにより、プラズマ素反応をその場で解析することにある。プラズマによる反応過程や反応生成物の解析を行うためには反応過程に極力影響を与えないよう非接触かつ遠隔走査での診断が必須である。昨年度まで開発を行った光混合法を用いた分光器にTHz領域キャビティを組み込みTHz-CRDシステムを構築した、是を用いて気相プラズマ中の不安定分子のその場観測に挑戦した。 実験において、構築した分光器の時間的、機械的安定度が十分でない為、周波数掃引した時に測定データへ大きな誤差が含まれることとなった。特に周波数の再現性に問題が有り、リファレンス測定とサンプル測定時に起きる僅かな周波数差が大きなノイズ成分を生成してしまった。また、連続的なプラズマを生成するためプラズマチャンバ部における発熱がかなり大きくチャンバの窓部材である高抵抗シリコンが膨張し、これが原因で窓やチャンバ内における多重反射の作り出すスペクトル特性が周囲の温度や時間で変動し、単一周波数での測定においても値が大きく変動してリファレンスデータにより規格化することが不可能となってしまった。以上のような状況であるためTHzキャビティの調整も困難を極め目的の周波数にきちんと調整が取れているのかどうか、また調整が取れたとしても直ぐにずれてしまうため測定そのものが不可能な状況であった。 以上の結果から、より安定度の高い分光器と熱対策を十分行ったプラズマチャンバを用いないと目的の測定が行えないことが判明した。
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