研究課題/領域番号 |
23540577
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
大津 康徳 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50233169)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハイブリッドリングホロ-放電 / ホロー陰極効果 / 容量結合放電 / 2次電子放出係数 |
研究概要 |
本研究の目的は、太陽電池などの大型パネル基板上に、機能性薄膜を高速かつ均一に製膜するプラズマプロセス装置を開発することである。平成23年度の研究成果として、(1)ハイブリッドリングホロー放電装置の構築とプラズマ安定放電確認、(2)自作静電プローブによるプラズマ計測、(3)PICシミュレーションによるプラズマ放電検証を得られた。具体的には、(1)については、溝幅10mm、深さ10mmのリング状溝を形成した直径100mmサイズのアルミニウム製リング状ホロー電極を製作し、直径160mm、長さ200mmのアルミニウム製真空容器の上部に設置した。真空容器は、ターボ分子ポンプ(購入備品)により、高真空に排気され、アルゴンガスを30Pa程度封入し、工業用周波数である13.56MHzの高周波電圧をリング状ホロー電極と接地された真空容器壁間に印加することにより、プラズマを安定に生成させることができた。(2)については、安定生成できたプラズマのパラメータ(電子温度、電子密度)の計測を自作の静電プローブシステムにより、計測を行った。その結果、溝直下において、1cc当たり10の10乗~10の11乗個程度の高密度プラズマが得られることが確認できた。(3)については、2次元PICシミュレーションコードを用いて、(1)、(2)で得られた実験条件下において、リング状ホロー電極を用いた場合の放電空間中の電子とイオンの2次元挙動解析を行った。溝内では、イオンのみ残り、電子は、電極外へ移動することが分かった。即ち、リング状ホロー電極は13.56MHzで高周波電位振動しているが、溝内では実効的には、イオンシースを形成していることが分かった。また、時間経過とともに、電子密度、イオン密度とも増加し、計算時間10マイクロ秒において、実験値とほぼ同じ値に達することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッドリングホロー放電装置の構築と安定放電、プラズマパラメータの計測、粒子シミュレーションによるハイブリッドリングホロー放電プラズマの検証を行うことができた。即ち、研究目的を達成するために、平成23年度に実験計画を立てた内容をほぼ遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、平成23年度で得られた研究成果を基に、次の計画を予定している。まず、前年度に製作した2次電子係数の高い酸化マグネシウム薄膜を塗布したリングホロー電極を用いて、プラズマパラメータを計測し、前年度の値を超えることができるかどうかを検証する。その確認後、リングホロー溝を多重化させることにより、高密度プラズマの均一化(数%程度)を実現させる。具体的には、(1)PICコードを用いた数値シミュレーションによるリング溝数を1重から4重に変化させたときのプラズマ均一性評価、(2)(1)の結果を基に、均一性に最適な溝数を決定し、最適な溝数のリングホロー電極の製作、(3)(2)で製作した電極を用いて、プラズマ密度の空間分布計測とシミュレーション結果との比較検証を行い、均一性が達成できたかどうかを検討する。それらの結果を踏まえて電極の形状などの改善を行い、シミュレーションと実験を繰り返し行うことにより、最適な均一性に近づける。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費として、物品費75万円程度(繰越費5万円程度含む)、旅費20万円を計画している(平成23年度に繰越費5万円程度が生じた理由として、ターボ分子ポンプが交付申請時より安く購入できたことなどによる)。物品費の内訳として、リングホロー電極の製作費(特注:30万円程度)、高周波・真空・計測関連部品(30万円程度)、高圧ガス(5万円程度)、シミュレーション用自作パソコン部品(10万円程度)などである。旅費の内訳として、応用物理学会、電気学会、各種研究会、国際会議(国内)などを計画している。
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