研究課題/領域番号 |
23540578
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
迫田 達也 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90310028)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水中プラズマ / オゾン / 口蹄疫ウィールス |
研究概要 |
口蹄疫ウィールス等の殺菌消毒に環境に負荷をかけない殺菌消毒技術は有用であり,本研究では多孔質体の一側面部にメッシュ電極を密着配設して交流電圧を印加することで多孔質ガラスの細孔内及び液相側沿面で放電を発生させてオゾンの生成を可能とする水中オゾナイザを提案している。今年度は水中放電の生成を明らかにすると共に,オゾンやラジカルの高い生成効率が得られる最適な細孔径の選定を行うこととした。液相側で気泡が発生するバブルポイント(BP)圧は,細孔径が小さくなる程BP圧が上昇すると共に放電開始電圧が高くなることを明らかにした。また,供給圧力を上昇させる程オゾン濃度が低下すると共に放電電力が低下することが確認できた。さらに,オゾン生成効率を評価した結果,(1)ガス圧力が高くなる程オゾン生成効率が低下することが明らかとなった。 ところで,平均細孔径は液相側の多孔質膜表面における発生気泡の大きさや発生頻度,これに伴う放電の発生頻度を左右する。そこで,高速度カメラを用いて液相側の多孔質膜表面を観測した。その結果,(2)平均細孔径が大きい多孔質膜においては膜表面で発生する気泡径が大きくなるばかりではなく,膜表面から気泡が離脱する際に気泡同士が結合するためBP圧は低いが放電体積が小さくなりオゾン濃度が低下することが明らかとなった。また,(3)平均細孔径が小さい程,気泡の離脱・上昇速度が低く,被処理水中のオゾンの溶解効率を高めることができる。上述の(1),(2)および(3)から,平均細孔径10μmの程度の多孔質膜を用いてBP圧以上で極力低い圧力で放電を生成することが望ましいことが明らかとなった。 以上のように,多孔質膜の平均細孔径は液相側の膜表面における発生気泡の大きさや発生頻度,離脱速度,これに伴う放電の発生とオゾン濃度を大きく左右する。水中プラズマ発生装置を製作する上で意義ある情報が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が行っている水中プラズマ発生装置によれば,1~2kV程度の電圧で放電を効果的に生成することができるので,システムを単純で安価なものにできる上,エネルギー変換効率を高くできる。このような水中プラズマ発生装置は,多孔質体の気液界面近傍での放電現象を利用した新規のオゾン,酸素・OHラジカル生成法の一つである。しかし,使用した多孔質体が水中プラズマ発生装置にとって最適な材料であるかも含めて,最適な平均細孔径や酸素の供給圧力や流量については明らかにできていない。そこで今年度は,(1)水中マイクロバリア放電の生成状態を明らかにするとともに,オゾンやラジカルの高い生成効率が得られる最適な細孔径を有する多孔質膜の選定を行う,(2)多孔質膜の平均細孔径は,液相側の多孔質膜表面における発生気泡の大きさや発生頻度,これに伴う放電の発生頻度を左右するので液相側の多孔質膜表面における気泡の大きさや発生頻度,放電の様子及び発生頻度を観測する、こととした。 以上の(1)および(2)の目標に対して、多孔質膜の平均細孔径が液相側の膜表面における発生気泡の大きさや発生頻度,離脱速度,これに伴う放電の発生とオゾン濃度を大きく左右することを明らかにした。具体的には、平均細孔径10μmの程度の多孔質膜を用いてBP圧以上で極力低い圧力で放電を生成することが望ましいことを明らかにした。これらは、水中プラズマ発生装置を製作する上で意義ある情報であり、低コストでエネルギー変換効率の高い水中プラズマ発生装置の仕様策定に関わるような当初の研究計画・目標に対する解となっている。さらに、研究の過程で得られた知見をもとに、ベンチュリー効果を利用した二重ガラス管構造でオゾンやラジカルの生成量の高いプラズマ源の開発等の拡がりを得た。前述の成果と併せて、5件の学会発表を行っており、当初の計画どおりに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高いオゾンの生成効率が得られる最適な細孔径を有する多孔質体の選定が平成23年度に行えたので、水中でマイクロ放電を生成することによりオゾンとともに生成が期待される過酸化水素(H2O2)の濃度測定,酸素・OHラジカルの生成・挙動を発光分光法で明らかにする。得られた結果を基に,簡易で低コストの殺菌・消毒関連技術を開発していく。また、平成24年度からは、実応用に耐えるプロトタイプの製作も行っていく。 上述の今後の研究は、大学院生3名,学部学生2名の他,これまでと同様に(株)電装研の馬場誠二氏とは1ヶ月に数回検討会を行い,放電現象の解析及び水処理に最適な装置構造ならびに応用範囲について検討を続けながら進める。本提案研究で取り扱う水中プラズマオゾナイザは,多孔質体内の細孔表面に沿った沿面放電及び液相側気泡内の放電は気液界面での放電現象であるため,同氏の沿面放電における知見が本研究を進める上で非常に有用であると考えている。さらに、2009年4月から(株)旭有機材工業とは共同研究を実施しており,(株)旭有機材工業とは引き続き検討会を定期的に行い,応用分野の開拓及び本研究で開発する水中プラズマ発生装置を殺菌や脱色処理に適用した場合のそ効果について定量的な評価を行なう。更に,処理のための最適オゾン濃度についても同氏から情報を得ることができる。本研究で開発する水中プラズマ発生装置を殺菌や脱色処理に適用した場合のその効果について定量的な評価を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度以降では,まず,液相側の多孔質膜表面で生じる微細機構内で発生するマイクロ放電の特性を明らかにする。具体的には,気液界面における放電現象を既存設備の分光器を用いた発光分光法により,粒子挙動を明らかにする。また,水処理に適用するためには長時間安定に動作可能なオゾナイザであることが必須である。放電生成部の温度が極端に高くなると,オゾンやラジカルの生成効率は低下する。そこで,既存設備のサーモグラフィにより放電発生時の多孔質膜の気相側,液相側温度を溶存オゾン濃度の測定と同時に長時間に亘って行う。この結果に基づいて,水中プラズマ発生装置を試作し、多孔質膜に密着配設するメッシュ電極の配設方法や構造を検討する。ここで得る知見は,プロトタイプの製作に大きく貢献する。併せて、平成24年度からは、実応用に耐えるプロトタイプの製作も予定しており,構成部品の消耗品(オゾナイザ試作部品として計上している。)としての支出が見込まれる。
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