研究課題/領域番号 |
23540578
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
迫田 達也 宮崎大学, 工学部, 教授 (90310028)
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キーワード | オゾン / ラジカル / 殺菌 / 消毒 |
研究概要 |
口蹄疫ウィールス等の殺菌消毒に環境に負荷をかけない殺菌消毒技術は有用であり,本研究では多孔質体の一側面部にメッシュ電極を密着配設して交流電圧を印加することで多孔質ガラスの細孔内及び液相側沿面で放電を発生させてオゾンの生成を可能とする水中オゾナイザを提案している。 今年度は、まず、高速度カメラによる放電現象の観測から、気泡内部での放電は気泡が多孔質膜表面からの脱離周期に依存することを明らかにした。本研究で使用した電源周波数が12kHzの場合、放電は位相0度に最低1回発生するとしても、1気泡内で最低512回放電が生起することになる。また、多孔質膜表面における放電面積は、被処理水の導電率に依存するが、放電発生回路に適切な電流の制限抵抗を導入することで局部的な放電の発生を抑制することができ、結果として多孔質膜全面での放電発生を促すことが確認された。 放電発光の観測からは、波長309nm近傍のOHラジカルによるバンドスペクトルを測定し、本研究提案のプラズマ源が高い酸化力を有するOHラジカルを生成できることで有用な促進酸化処理装置であることを確認した。さらに、オゾンのみを供給した場合と本研究提案装置によりオゾンとOH等のラジカルを同時供給することにより行った酢酸分解試験より、OHラジカルの供給効果を確認した。その結果、オゾンのみを注入した場合に酢酸の分解が出来ない一方で、本装置では40分間で約50%程度の分解を確認した。 また、本装置によるOHラジカルの生成は気泡の生成特性に依存すると考えられ、気泡生成のガス流量及び圧力の依存性を検討した。その結果、OHラジカルの発光強度はガス流量を制御した場合には顕著な変化は確認出来ず、ガス圧力を制御した場合に封入圧力の増加に伴って高くなった。以上のように,水中プラズマ発生装置を製作する上で意義ある情報が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水中プラズマ発生装置は,多孔質体の気液界面近傍での放電現象を利用した新規のオゾン,酸素・OHラジカル生成法の一つである。しかし,使用した多孔質体における気泡と放電の発生機構や本研究プラズマ源の促進酸化処理源の有用性について具体的に明らかにできていない。そこで今年度は,(1)液相側の多孔質膜表面からの気泡の脱離現象と気泡内放電現象を既存設備の分光器及び高速度ビデオカメラで観測、(2)オゾンでは分解できないとされている酢酸水溶液の分解試験に水中酢酸水溶液の分解試験に適用し、OHラジカルの促進酸化効果を確認プラズマ源を適用し、OHラジカルの促進酸化効果を確認、(3)OHラジカルの生成量に関してのガス流量及び圧力依存性、を明らかにすることとした。 以上の(1)から(3)の目標に対して、気泡内部での放電は気泡が多孔質膜表面からの脱離周期に依存すること、酢酸の分解試験をとおしてOHラジカルによる優れた促進酸化処理能力の確認、本装置によるOHラジカルの生成量がガス流量ではなくガス圧力に大きく依存することを明らかにした。以上のように,水中プラズマ発生装置を製作する上で意義ある情報が得られた。これらは、水中プラズマ発生装置を製作する上で意義ある情報であり、低コストでエネルギー変換効率の高い水中プラズマ発生装置の仕様策定に関わるような当初の研究計画・目標に対する解となっている。さらに、昨年度と同様に、研究の過程で得られた知見をもとに、ベンチュリー効果を利用した二重ガラス管構造でオゾンやラジカルの生成量の高いプラズマ源の開発及び改善に関して拡がりを得た。また、前述の成果と併せて、4件の学会発表を行っており、当初の計画どおりに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実応用する際は、長時間安定に動作可能なプラズマ源であることが必須である。放電生成部の温度が極端に高くなると,オゾンやラジカルの生成効率は低下する。そこで,既存設備のサーモグラフィにより放電発生時の多孔質膜の気相側,液相側温度を溶存オゾン濃度の測定と同時に長時間に亘って行う。この結果に基づいて,水中プラズマ発生装置を試作し、多孔質膜に密着配設するメッシュ電極の配設方法や構造を検討する。ここで得る知見は,プロトタイプの製作に大きく貢献する。 上述の今後の研究は、大学院生2名,学部学生2名の他,これまでと同様に㈱電装研の馬場誠二氏とは1ヶ月に数回検討会を行い,放電現象の解析及び水処理に最適な装置構造ならびに応用範囲について検討を続けながら進める。本提案研究で取り扱う水中プラズマオゾナイザは,多孔質体内の細孔表面に沿った沿面放電及び液相側気泡内の放電は気液界面での放電現象であるため,同氏の沿面放電における知見が本研究を進める上で非常に有用であると考えている。さらに、2009年4月から2011年3月まで共同研究を実施した㈱旭有機材工業とは引き続き検討会を定期的に行い,応分野の開拓及び本研究で開発する水中プラズマ発生装置を殺菌や脱色処理に適用した場合のそ効果について定量的な評価を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
実応用する際は、長時間安定に動作可能なプラズマ源であることが必須である。放電生成部の温度が極端に高くなると,オゾンやラジカルの生成効率は低下する。そこで,既存設備のサーモグラフィにより放電発生時の多孔質膜の気相側,液相側温度を溶存オゾン濃度の測定と同時に長時間に亘って行う。この結果に基づいて,水中プラズマ発生装置を試作し、多孔質膜に密着配設するメッシュ電極の配設方法や構造を検討する。ここで得る知見は,プロトタイプの製作に大きく貢献する。併せて、平成24年度に引き続き、実応用に耐えるプロトタイプの製作を行う。構成部品の消耗品(オゾナイザ試作部品として計上している。)としての支出が見込まれる。
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