口蹄疫ウィールス等の殺菌消毒に環境に負荷をかけない殺菌消毒技術は有用であり,本研究では多孔質体の一側面部にメッシュ電極を密着配設して交流電圧を印加することで多孔質ガラスの細孔内及び液相側沿面で放電を発生させてオゾンの生成を可能とする水中オゾナイザを提案している。今年度は,まず,本研究提案の水中プラズマ発生装置の実利用を目的に,比較的耐性の強いとされる芽胞菌の殺菌を行い,その殺菌特性を評価した。 原料ガスにArを用いた水中プラズマにおいて,殺菌要因として挙げられるのは,OHラジカル,OHラジカル生成後の反応で作られる過酸化水素に加えて,309 nm 付近のOHの発光による紫外線である。そこで,処理水にマンニトールを加えて殺菌効果を検証した。マンニトールはOHラジカルのスカベンジャーであり,OHと選択的に反応する。従って,OHラジカル及び過酸化水素の影響を除いた,紫外線のみによる殺菌効果を評価することができた。すなわち,Arガスを用いた水中プラズマ法による殺菌試験より,殺菌要因は309 nm付近の紫外線発光と,OHラジカルが主であることが確認された。また,その殺菌効果は同程度であり,処理開始60 minで細菌数を1/500程度まで減少できることが分かった。さらに,酸素ガスを用いた水中プラズマ法による殺菌試験より,水中プラズマ法において殺菌効果が高いことが確認された。 さらに,実応用する際は,長時間安定に動作可能なプラズマ源であることが必須である。放電生成部の温度が極端に高くなると,オゾンやラジカルの生成効率は低下する。そこで,サーモグラフィによりプロトタイプでの放電発生時の多孔質膜の気相側,液相側温度を溶存オゾン濃度の測定と同時に長時間に亘って温度変化を観測し,±10%以内の温度及び濃度の安定性が確認できた。
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