気体-液体ハイブリッド方式高気圧パルスグロー放電による排気ガス処理に供する放電実験装置の調整、放電状態、および、それに伴うガス密度擾乱の高速度観測、ならびに、排気ガス処理実験を進めた。 放電電極の表面に液体を塗布し極めて薄い層を設け、実際の排気ガス処理を想定して大気圧付近の空気を放電バッファガスとした場合において、当該放電実験装置ではバッファガスの圧力が20kPa前後にて放電発光の幅が約2cmの安定したグロー様の放電が得られた。なお、放電中にはフィラメント状の放電発光の強い箇所が若干認められたが、アーク状の放電は起こっていない。これは、放電の電圧および電流の計測から得られた放電抵抗の推移からも確認できている。以上より、幅2cm×高さ2cm×長さ60cm=240ccの大体積にわたり排気ガス処理に適用可能な高気圧パルスグロー放電の生成に成功した。なお、ガス圧力が想定する大気圧より若干低いが、予備電離の強化などにより改善できるものと思われる。 上記の結果および昨年度までのホルムアルデヒド処理実験に関する放電プラズマ分光計測の結果を踏まえ、排気ガス処理プロセスモデルを構築し、排気ガス処理に係る数値実験を行った。モデルは、放電実験から得られた電圧および電流より放電注入電力や電子の総数を求める部分、レート方程式により電子や原子・分子の反応を求める部分、排気ガス処理チャンバ内でのガスの循環を考慮する部分から構成される。数値実験結果によれば、水素原子、酸素原子、水酸基ラジカルの生成が認められ、これらが寄与して排気ガス処理がなされると推測した分光計測の結果を裏付けた。また、処理に伴う副生成物の濃度を算定できた。
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