研究課題/領域番号 |
23550001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高草木 達 北海道大学, 触媒化学研究センター, 准教授 (30359484)
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研究分担者 |
角山 寛規 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特任講師 (40390661)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 触媒 / 二酸化チタン / 金クラスター / 表面科学 |
研究概要 |
本研究では、単原子~10 nmまでの厳密に原子数制御した金属クラスターを、極めて小さいサイズ分布、及び任意の密度で酸化物表面へ担持する方法論を開発する。また界面の構造を、先端的表面科学計測法により原子レベルで明らかにし、触媒反応測定の結果と比較することで、サイズに依存した反応活性の起源を解明する。 本年度は、まずTiO2単結晶表面上にAu原子数の規定された有機保護Auクラスターを凝集することなく担持するための方法論開発を行った。クラスターとして有機保護Au10クラスター([Au10(PPh3)8Cl]Cl)を用いた。TiO2単結晶表面へアンカー分子(4-メルカプト安息香酸)を溶液中で吸着させた後、Au10クラスターを含む溶液中に浸漬することで、クラスターの固定化を試みた。XPSよりAu10クラスターの固定化を確認し、浸漬時間により担持量を制御できることがわかった。また偏光全反射蛍光XAFS法による構造解析を行ったところ、サイズ(Au原子数)は保持されているが、固定化前(粉末状)の構造とは異なった。アンカー分子のS原子がクラスターに配位することで、Au-Au平均結合距離が約0.015 nm伸び、さらに一部の有機保護基が脱離することがわかった。この結果は予想していなかったが、特別な処理を行わなくても有機保護基を除去して活性な金属表面を露出できる可能性がある。当初の計画ではこの後、クラスター周辺に存在するOH基(TiO2の表面水酸基)とSi(OCH3)4を反応させ、さらに加水分解してOH基をつくるという反応を繰り返すことでクラスター周囲にSiO2壁を導入し、紫外光照射等により有機保護基を除去することを提案していた。このプロセスでは有機保護基除去時にクラスターの凝集を防ぐためにSiO2壁を導入するわけであるが、このプロセスを省略できれば試料調製は非常に簡便になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに研究を進める中で、予想とは異なる新しい結果を得ているが、これらの結果はいずれも研究の目的を遂行する上で、より簡便で有用な方向への展開が期待できるものであり、本年度の達成度は当初の目標に達していると考えられる。上記の具体例としては、「研究実績の概要」に示したように複数のプロセスからなる試料調製において、有機保護基の除去による触媒活性化プロセス(金属表面の露出)を省略できる可能性を示したことが挙げられる。今後、クラスターの表面固定化条件を最適化することで、実際にこのプロセスの省略が可能かどうか検討する。また別途、アンカー分子を用いないで、有機保護Auクラスターを単分散した状態でTiO2単結晶表面へ担持できる方法(スピンコート法によるクラスター担持)を見出しつつある。スピンコート時における溶液濃度や溶液量など、今後詳細に条件を振って最適化する必要はあるが、この方法が実現すれば、アンカー分子の吸着というプロセスを省略することができる。 さらに本年度は、当初の予定では次年度に行う触媒反応活性測定に用いる超高真空触媒反応測定装置の立ち上げを行うことになっていたが、すでに超高真空チャンバーへの高感度質量分析計の取り付けや試料ホルダーの設計・制作・取り付けなど、装置の立ち上げは終了している。標準サンプルとしてPtフォイルを用い、CO酸化反応を行ったところ、生成物であるCO2を十分な感度で検出し、定量的な活性評価ができることを確認済みである。
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今後の研究の推進方策 |
まずは厳密に原子数制御したAuクラスターをTiO2単結晶表面上に担持する方法論を確立する。現在、(1)アンカー分子との相互作用を用いて、原子数制御した有機保護クラスターを固定化とともに有機保護基を除去する方法、(2)アンカー分子で修飾した表面に有機保護クラスターを固定化後、クラスター周囲にSiO2壁を作成してから紫外光照射や電気化学的酸化により有機保護基を除去する方法、(3)アンカー分子を用いずスピンコート法により、有機保護クラスターをTiO2表面上に単粒子状に分散させ、紫外光照射や電気化学的酸化により有機保護基を除去する方法(凝集する場合はSiO2壁を作成後に有機保護基を除去)、の3種類の方法を試みているが、より効率的なプロセス(ステップ数が少ないプロセス)は(1)と(3)である。従って(1)、(3)の方法論をまず重点的に検討するが、得られるクラスターのサイズ分布が大きい場合には(2)に移行する。 方法論を確立しだい、酸化物上担持Auクラスター触媒が活性を示すとされている低温CO酸化反応、エチレンのO2+H2によるエポキシ化反応に関して、立ち上げた超高真空触媒反応測定装置を用い、TiO2単結晶表面上に調製した各サイズのAuクラスターの活性評価を行う。有機保護基で保護されたクラスター(Au10、Au44、Au147(粒径~1 nm)など)をメタルソースとして用いる。最も活性の高いクラスターサイズ(原子数)及びクラスター/基板界面構造を決定する。 最も活性なサイズを有するものに関して、TiO2粉末を酸化物担体として用い、同様な調製法によって精密担持Auクラスター触媒を作成し、実触媒としての性能を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度未使用額の691,890円は、平成23年度に実施した搬送チャンバー架台改造の支払いに使用する。
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