研究課題/領域番号 |
23550001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高草木 達 北海道大学, 触媒化学研究センター, 准教授 (30359484)
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研究分担者 |
角山 寛規 慶應義塾大学, 理工学研究科, 講師 (40390661)
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キーワード | 触媒 / 二酸化チタン / 金クラスター / 表面科学 |
研究概要 |
本研究では、単原子から10 nm程度までの原子数を厳密に制御した金属クラスターを、極めて小さいサイズ分布かつ任意の密度で酸化物表面へ担持する方法論の開発を行っている。また担持後のクラスター構造を、種々の表面科学計測手法(STM/AFM、偏光全反射蛍光XAFS)により原子レベルで明らかにし、触媒反応測定の結果と比較することでサイズに依存した反応性の解明を試みている。 本年度はTiO2単結晶上においてAu単原子種の調製を試みた。Auクラスターは酸化物との相互作用が小さく、そもそも凝集しやすい。最小単位である単原子は容易に拡散・凝集し、酸化物上で安定化するのは非常に難しい課題である。当初の予定ではTiO2単結晶上に単核金錯体を吸着後、SiO壁で覆ったのちに活性化処理(配位子除去)を行う予定であったが、用いた単核金錯体はTiO2上に十分な量吸着しなかったため、調製方法を変更した。具体的にはTiO2単結晶をあらかじめメルカプト安息香酸で修飾し、その後Auを真空蒸着した。この試料を偏光全反射蛍光XAFS法で評価したところ、Au-Au結合は観察されず、Auは単原子種として存在することを見出した。理論計算シミュレーションを用いた三次元構造解析を行った結果、AuはTiO2の酸素およびメルカプト安息香酸の硫黄と結合して、S-Au-Oの直線状化合物として構造安定化していることがわかった。本調製法はAuの蒸着量を制御することで、ダイマー(二量体)、トライマー(二量体)などの形成も期待でき、現在検討している。 また昨年度立ち上げた超高真空反応測定装置の高感度化を行った。これは昨年度に性能評価のために使用したPtフォイルに対し、担持クラスターでは活性点の数が少なく、よりS/Bの高い測定が必要とされるからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究遂行において、開始当初最も困難が予想されていたのはTiO2表面上での単原子種(Au)の調製であった。「研究実績の概要」でも述べたように、申請書で提案した調製法では単原子種を調製するのが難しいことがわかり、別の調製法(TiO2表面を分子修飾後にAuを真空蒸着)を開発することで、単原子種を安定化することができた。 また上記の「TiO2表面の分子修飾と金属蒸着による微小金属クラスター形成法」のみならず、当初申請書に記載していなかった他のいくつかの微小金属クラスター調製法を新たに見出している。一つはプラズマを用いたクラスター調製法である。TiO2単結晶上に有機保護Auクラスターを担持後、酸素プラズマを照射することで有機保護基が酸化除去されるとともに、照射時間を長くするとクラスターサイズが減少することを見出した。本現象のメカニズムは現在検討中だが、プラズマによって生じた活性酸素種がAu表面で反応して表面酸化物が形成された後に、局所的な温度上昇によって蒸発していくためではないかと考えている。この調製法が確立できれば、SiO2壁でAuクラスターを囲う必要はなく、また用いるクラスターも比較的大きなものが一つあれば、酸素プラズマ照射によってそれ以下のサイズをすべて調製できる可能性がある。他にもあらかじめTiO2表面上に均一なナノサイズの穴(ナノポア)を規則的に有するSiO2薄膜を調製し、その穴に金属クラスターを埋め込む調製法を検討している。 以上のように当初予定していた試料調製法とは異なる、より優れた新たな調製法を開発することで、目的試料の作成を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、改良によって高感度化を行った超高真空触媒反応測定装置を用いて、TiO2単結晶表面上に調製した各サイズのAuクラスターの触媒活性を測定する。触媒反応としてはCO酸化反応を対象とする。反応測定によりもっとも活性なサイズ・界面構造を決定し、それを粉末触媒(実触媒)として再現することを試みる。 また新たに見出したプラズマによるクラスターサイズ制御法に関して、プラズマ条件とサイズの相関を明らかにしていく。プラズマ発生に用いるガスの種類(酸素や水素)、ガス圧力、プラズマパワーを系統的に変化させ、クラスターサイズがどのように変化するかを調べる。さらにあらかじめTiO2表面上に均一なナノサイズの穴(ナノポア)を規則的に有するSiO2薄膜を調製し、その穴に金属クラスターを埋め込む調製法についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に生じた未使用額については、分担者の角山講師(慶應義塾大)が実施するAuクラスター合成の実験にかかる消耗品の支払いに充てる。
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