今後の研究の推進方策 |
昨年度の遅れを回復するため、反応中間体構造の分光計測および計算解析を再開・強化する。対象は、主としてこれまでの研究で構造解明した系である[C6F6・Ln]+ (L=H2O, CH3OH, CH3COOH, NH3, ND3)について、特に、C…L間の特性振動励起に重点を置いて生成物出現閾値エネルギーを観測し、量子化学計算では容易には得られない反応ポテンシャル面鞍部エネルギー(特定反応経路に沿った障壁)に関わるデータを獲得することに努める。 一方、生成物分布には明らかな相違があり、質量スペクトルには、前者では求核置換反応の最終生成物アニリンイオンC6H5-NH2+ がほとんど出現しないが、最終置換反応生成物C6F5-NH2+ が出現すると同時に未反応物フラグメントC6F6+ も現れるケースも存在する。これらは反応、C6F6-NH3+ → C6F5NH2+ + HF では生成エンタルピーが大きなHF脱離過程を含むので、置換反応障壁が低いことに起因すると解釈される。その際、C6F5-NH2+ と C6F6+ の生成収率比が光励起エネルギー変化することは検証済みである。一方、C6H6-NH3+ では障壁が高いので生成物に至らず、中間体に留まることを表している。このような反応進行過程の差異の原因を解明することに力を注ぐこととする。
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