研究課題/領域番号 |
23550008
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
浜谷 望 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (70156420)
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研究分担者 |
藤久 裕司 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (90357913)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 三ヨウ化ホウ素 / 圧力誘起ダイマー化 / 圧力誘起分子解離 / ラマン散乱実験 / 放射光X線回折実験 |
研究概要 |
本研究では、分子性結晶三ヨウ化ホウ素が高圧力下で示す相転移において、カナダの理論家グループが予測した、(1)ダイマーが形成されるのか、(2)高圧相の結晶構造、について、実験的な証拠を得ることを第一の目的としている。 平成23年夏に行われたIUCr国際結晶学会で、代表者は上記理論グループ代表のD.Klugと研究の詳細を議論した。23年11月の第52回高圧討論会では、代表者と分担者がそれぞれそれまでの研究結果を発表した。 その後、新たな実験を開始した。(1)新たな試料を高圧発生装置に詰め(水分ppm以下の条件が必要なため特殊グローブボックスをもつ大阪大学の研究室と共同研究)、(2)高圧力下のラマン散乱実験を行ない(低波数での測定技術を有する岐阜大学研究室との共同研究、(3)第一原理計算による低圧相のラマンスペクトルの計算、及び高圧相として予想される複数の結晶構造のラマンスペクトルの計算を行った。 これまでに以下の重要な実験的知見が得られた。(1)相転移前にBI3平面分子の屈曲振動の振動数が圧力とともに減少するソフト化現象が見つかった。第一原理計算の結果もソフト化を示した。このような分子の結合力の低下はダイマー形成の前兆であることを強く示唆しており、相転移の前駆現象と理解することがでる。(2)これまで報告されたことのなかった高圧相のラマンスペクトルを測定できた。第一原理計算によるスペクトルと比較した結果は、同じ三斜晶系に属するものの、ダイマー2個を単位胞に含む結晶構造ではなく、ダイマー4個を含む構造が適切であると結論できた。以上の結果を、現在、論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)試料調整の方法を確立でき、今回のラマン実験が可能になった。(2)さらに、将来、より高圧下でのX線回折実験、光学実験の展望が開けた。(3)ラマン実験から有意義な結果を得ることができ、研究目的の実現に大きく近づいた。(4)論文化の目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ラマン実験に使用した高圧状態にある試料を高温でアニールする。この操作によって、試料の歪を解消し、より良い試料および静水圧条件を実現することができる。(2)アニールした試料のラマン実験を行い、さらに放射光X線回折実験を行う。(3)第一原理計算で複数の高圧相結晶構造候補についてX線回折パターンを計算する。(4)実験と計算結果の比較から、BI3の高圧相結晶構造を最終的に決定する。(5)研究結果を論文化すると同時に、高圧討論会および物理学会で発表する。(6)より高い圧力下での実験を行い、ダイマー以外の多量体分子の探索を行う。これにより、分子性結晶BI3の圧力誘起完全分子解離への道筋を解明できるものと期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費のほぼ半額を旅費が占める。大阪大学と岐阜大学と共同で研究を進めており、試料封入とラマン散乱実験をそれぞれの大学で行う。また、放射光X線回折実験を行うための旅費も含めている。さらに、学会発表のための旅費を含む。「計算ソフト使用料」は第一原理計算ソフトのライセンス料の一部とする。その他、英語論文添削費、実験器具購入費、PC周辺機器購入費などを計上している。
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