研究課題/領域番号 |
23550008
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
浜谷 望 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (70156420)
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研究分担者 |
藤久 裕司 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (90357913)
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キーワード | 三ヨウ化ホウ素 / 圧力誘起ダイマー化 / 圧力誘起分子解離 / ラマン散乱実験 / 放射光X線回折実験 |
研究概要 |
本研究では、分子性結晶三ヨウ化ホウ素が高圧力下で示す相転移において、カナダの理論家グループが予測した、(1)ダイマーが形成されるのか、(2)高圧相の結晶構造、について、実験的な証拠を得ることを第一の目的としている。昨年度末に大阪大学および岐阜大学と協力してラマン散乱実験を行った。本年度はラマン散乱実験に用いた同一試料について、下記の目的でKEK PF-ARにおいて放射光X線回折実験を行った。 (1) ラマン実験に使用した高圧状態にある試料を高温でアニールして試料の歪を解消し、より良い回折パターンを得る。 (2) 実験で得られた回折パターンを再現する結晶構造モデルを、第一原理計算で計算する。 (1)については目論見に反して、試料の粒成長がみられ、回折パターンの質が悪化することが分かった。そのため、室温のまま、アニールすることなく試料を加圧して複数の圧力点で回折パターンを測定した。現在そのパターンを解析中である。ラマン散乱実験の結果は、平成24年9月の日本物理学会2012年秋季大会、および11月の第53回高圧討論会で発表した。以上の結果を、現在、論文に執筆中である。一方、本研究のもう一つの対象物質であるSnI4とその類型分子性結晶GeI4の研究を進めた。本年度はとくに圧力誘起液体-液体相転移に注目した放射光X線回折実験と高温高圧下の密度測定実験を行ない、この相転移が一次である可能性が高いことを示した。これらの結果は平成24年9月および25年3月の日本物理学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)X線回折実験が当初の予想と異なり、データの質の改善が見られないことが判明した。これによって、高圧相結晶構造の確定に支障が出た。(2)しかし、一連の有意義なデータは測定できたので、それらを解析中である。(3)ラマン散乱についての論文はほぼ完成しており、最終的な投稿を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ラマン散乱実験の論文を投稿する。(2)本年度に得た放射光X線回折実験データを、第一原理計算と組み合わせて解析する。(3) 実験と計算結果の比較から、BI3の高圧相結晶構造を最終的に決定する。 (4)BI3のより高い圧力下での実験を行い、ダイマー以外の多量体分子の探索を行う。(5)SnI4について、アモルファス化、結晶構造相転移の第一原理計MDシミュレーションを行う。(6)以上の研究結果を論文化すると同時に、高圧討論会および物理学会で発表して、本研究の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
放射光X線回折実験を行うための実験器具、消耗品代、および実験旅費として使用する。さらに、学会発表のための旅費にあてる。「計算ソフト使用料」は第一原理計算ソフトのライセンス料の一部とする。その他、英語論文添削費、PC周辺機器購入費などを計上する。
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