研究課題/領域番号 |
23550012
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
勝木 明夫 信州大学, 全学教育機構, 准教授 (70283223)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 磁場効果 / 磁気配向 / 超伝導磁石 |
研究概要 |
ナノチューブは磁化率異方性を持つため,磁場による配向が可能である.また,通常の重力条件では基板無しで薄膜を作成することは困難であるが,磁場下では微小重力条件ができるため,基板無しで薄膜を作成することができる.本研究では,連携研究者との協力で磁場下で微小重力と磁場配向との相乗効果を利用して磁場下で種々のナノチューブを任意の角度に配向させた薄膜の作成を試みた.予備実験として,以下の実験を行なった.カバーガラスを基板として,マルチウォールカーボンナノチューブ(直径約80 nm,長さ10-20 µm,鉄残量20ppm以下)をポリビニルアルコール(PVA)水溶液に分散した試料を基板に対して垂直方向に15テスラの磁場を印加させている条件下で自然乾燥させた.得られた薄膜をXRDおよびAFMで評価した.その結果,磁場中でカーボンナノチューブはほぼ垂直に配向していることがわかった.磁場による微小重力条件下で基板無しでPVA薄膜の作成条件を検討した.銅製の針金で作成したリングを基板の代わりとした.微小重力点で作成したところ,磁場中のPVA薄膜作成は温度および湿度によって著しく安定性が変化することがわかった.このため,恒温恒湿条件になるようにセットアップを行った.また,銅製のリングも安定に薄膜ができるように種々の種類を作成し,検討を行った.さらに,リングと磁場印加方向の角度を変えたものも作成し,ナノチューブを任意の角度に配向させた薄膜の作成を試みた.基板無しでカーボンナノチューブが任意の方向に配向している薄膜の例はほとんど報告がなく,本研究が初めての例である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁場による微小重力条件下でナノチューブが配向していることがわかり,さらに基板無しでカーボンナノチューブをドープした薄膜を作成することにも成功している.任意の方向にカーボンナノチューブが配向した薄膜は予備実験の段階であるが,概ね良好な結果が得られている.その場観測は進行中である.
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今後の研究の推進方策 |
磁場による微小重力と磁場配向との相乗効果を利用して,ナノチューブを任意の角度に配向させた薄膜の作成条件を検討する.キラリティの測定評価ができる程度の均一な膜厚の薄膜ができるようにする.そして,XRD測定およびAFM観測による配向度の評価を行う.また,紫外可視分光光度計を用いた偏光吸収測定等の方法でも評価を行う.さらに他のナノマテリアルを用いた薄膜の作成条件の検討を行う.このときは複屈折測定による評価を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬類で当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため,次年度使用額が生じた.カーボンナノチューブのような非透過の試料の吸光度を測定するため,固体の吸収が測定できる紫外可視分光光度計用積分球を購入する.この部品を用いることにより,カーボンナノチューブだけではなく,他の様々なナノマテリアルを用いて作成された材料の評価を行うこともできるようになるため,研究の展開が期待できる.さらに,カーボンナノチューブだけではなく,DNA等のナノマテリアル等の試薬類,その場観測を行うための光学部品を購入し,研究を進める.
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