ナノチューブは磁化率異方性を持つため,磁場による配向が可能である.また,通常の重力条件では基板無しで薄膜を作成することは困難であるが,磁場下では微小重力条件ができるため,基板無しで薄膜を作成することができる.本研究では,連携研究者との協力で磁場下で微小重力と磁場配向との相乗効果を利用して種々のナノチューブを任意の角度に配向させた薄膜の作成を試みた. 具体的には以下の方法で行った.マルチウォールカーボンナノチューブを種々の濃度のPVA水溶液に分散させた.銅製の針金で作成したリングを基板の代わりとし,試料溶液をリングに対して垂直方向に磁場を印加させ,高さ方向は微小重力点になる条件下で自然乾燥させた.温度および湿度の影響もあるため,恒温恒湿条件になるようにセットアップを行った.得られた薄膜をXRDおよびAFMで評価した.収縮後の薄膜についてもカーボンナノチューブは磁場印加方向に対してほぼ平行に配向していることがわかった.さらに,リングと磁場印加方向の角度を変えて,ナノチューブを任意の角度に配向させた薄膜についても確認を行った.これらの薄膜についてもカーボンナノチューブは磁場印加方向に対してほぼ平行に配向していることがわかった. 柔らかい繊維状高分子であるDNAについても薄膜の作成を行った.基板なしでも薄膜を作成することができた.また複屈折スペクトル測定装置を開発し,DNA薄膜の測定を行ったところ,DNAは磁場に対して垂直に配向していることがわかった.
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