研究課題/領域番号 |
23550015
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲葉 章 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30135652)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 極低温精密熱測定 / 単分子吸着膜 / 重水素化 / 配向秩序化 |
研究概要 |
本研究では,通常の構造解析や分光法で得られない構造情報,とりわけ分子間相互作用に関する知見を高精度熱測定により実験的に得ることを主な目的としている.そのために重水素化試料を用い,それをプローブとする.部分重水素化により対称性が低下したメタンやメチル基は一般に,凝縮相では回転的振動の基底状態を複数もつことになり,その乱れ(余分のエントロピー)は極低温で秩序化することが我々の研究によって明らかになってきた.その基底状態の分裂様式は,分子間ポテンシャルの対称性や強さに関する豊富な情報を含んでいる.バルク固体でほぼ確立できた以上の方法論を単分子吸着膜に展開することにより,精密熱測定が構造研究に大きく貢献できる局面を切り拓くのが具体的な目標である. 平成23年度は,バルク固体について前年度までに熱測定を済ませていたメチル基を有する化合物〔2,6-ジクロロトルエン,2,6-ジブロモトルエン,トルエン,メタノール,4-メチルピリジン,ヨウ化メチル〕のうち半数程度の化合物について,一連の重水素置換化合物がグラファイト表面に吸着した単分子膜を対象として,その極低温熱容量の精密測定を試みることが目標であった.そこでまず,メタノール単分子膜について0.3 K~20 Kの温度域で熱容量測定を行った.しかしながら,熱量計の断熱性が期待したほど良好でなく,高精度の熱容量測定というには不十分な結果しか得られなかった.そこで,装置の測定精度を向上させるべく,幾つかの改善を行うことに時間を費やすこととなった.現時点では,問題点について解決の見通しが付いたので,次年度には当初目標とした一連の化合物に関するデータが得られるものと期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも述べたが,測定装置のパフォーマンスが期待したほど良好でなく,単分子膜の高精度熱容量測定として満足な結果が得られなかった.そこで平成23年度は,装置の測定精度向上を目指して幾つかの改善を行うなどに大幅な時間を費やすこととなった.しかし,現時点ではほぼ解決の見通しが付いたので,次年度には当初の目標が達成されるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
上述したように,最近になって装置のパフォーマンスが向上し,問題が解決したので,今後は当初目的とした系について着実に測定を行う.これによって,当初の研究計画が遂行できる見込みである.
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次年度の研究費の使用計画 |
多少遅れ気味であった研究計画を推進する.当初の研究計画を変更する予定は特になく,予定していた実験研究をすべて終了させるために研究費を使用する.これにより,最終年度(平成25年度)は研究の取りまとめに専念する予定である.
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