研究課題/領域番号 |
23550018
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 晴之 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90251363)
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キーワード | 理論化学 / 擬縮退系 / 多配置電子状態炉論 / シミュレーション手法 / 相対論的電子状態理論 |
研究概要 |
本研究では、溶液内の擬縮退した複雑な電子状態の記述法としての多配置電子状態理論、および、溶液内あるいは生体内などの環境の効果を有効に取り込み、自由エネルギー面を一般的に構築する手法をあわせ開発し、溶液内の遷移金属系で、従来の手法では十分に明らかにすることのできない問題に適用することを目的としている。本年度は、前年度から開発を進めてきたd, f電子のための相対論的電子状態論として、電子占有数を制限した複数の活性空間に対する相対論的多配置SCF法(相対論的ORMAS-SCF法)、および、これを基盤とした多参照摂動論(相対論的ORMAS-GMCQDPT)を新たに実装し、ランタニド錯体、遷移金属錯体の励起状態に対して適用した。相対論的ORMAS-SCF法は活性軌道空間を部分空間に分割し、各部分空間の占有電子数を指定することで重要な電子配置を効率よく生成することができる方法である。この方法による波動関数を基にした多参照摂動計算により、たとえば、四塩化白金二価イオンの計算では、高度なMRSDCI波動関数を参照関数として用いた計算と比較して1/45の電子配置数と1/26の計算時間で、誤差0.1eV以下の励起スペクトルを得ることができた。また、溶液内の遷移金属錯体を記述するための手法として、相対論的電子状態理論と積分方程式理論を組み合わせた一次元および三次元RISM-SCF法を新たに実装し、遷移金属アクア錯体の励起状態と溶媒の三次元分布を詳細に調べた。この他にも、同手法を用いて、直鎖メロシアニン分子の励起状態と溶媒構造の解析、混合溶媒中におけるグリシンのプロトン移動反応の解析、アミノ酸の混合溶媒中での溶媒和に関する解析も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複雑な電子状態計算を念頭に置いた多配置理論の開発の継続、溶液内擬縮退系のシミュレーション手法の開発の継続、および、これらの手法の溶液な擬縮退系の問題への適用など当該年度中に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23、24年度に開発を進めた溶液内擬縮退系のための多配置電子状態理論、シミュレーション手法を活用し、d電子、f電子を含む分子系の複雑な電子状態の問題に適用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、物品費により、平成23年度に整備した計算機環境をより高度な計算を可能にするため増強した。平成25年度には、これらを維持するために計算機関係の消耗品を購入するとともに、理論計算補助のために謝金の支出を、また、成果の発表と連携研究者との研究打ち合わせのため旅費の支出を行う。
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