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2012 年度 実施状況報告書

溶液内擬縮退系のための多配置電子状態理論とシミュレーション手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23550018
研究機関九州大学

研究代表者

中野 晴之  九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90251363)

キーワード理論化学 / 擬縮退系 / 多配置電子状態炉論 / シミュレーション手法 / 相対論的電子状態理論
研究概要

本研究では、溶液内の擬縮退した複雑な電子状態の記述法としての多配置電子状態理論、および、溶液内あるいは生体内などの環境の効果を有効に取り込み、自由エネルギー面を一般的に構築する手法をあわせ開発し、溶液内の遷移金属系で、従来の手法では十分に明らかにすることのできない問題に適用することを目的としている。本年度は、前年度から開発を進めてきたd, f電子のための相対論的電子状態論として、電子占有数を制限した複数の活性空間に対する相対論的多配置SCF法(相対論的ORMAS-SCF法)、および、これを基盤とした多参照摂動論(相対論的ORMAS-GMCQDPT)を新たに実装し、ランタニド錯体、遷移金属錯体の励起状態に対して適用した。相対論的ORMAS-SCF法は活性軌道空間を部分空間に分割し、各部分空間の占有電子数を指定することで重要な電子配置を効率よく生成することができる方法である。この方法による波動関数を基にした多参照摂動計算により、たとえば、四塩化白金二価イオンの計算では、高度なMRSDCI波動関数を参照関数として用いた計算と比較して1/45の電子配置数と1/26の計算時間で、誤差0.1eV以下の励起スペクトルを得ることができた。また、溶液内の遷移金属錯体を記述するための手法として、相対論的電子状態理論と積分方程式理論を組み合わせた一次元および三次元RISM-SCF法を新たに実装し、遷移金属アクア錯体の励起状態と溶媒の三次元分布を詳細に調べた。この他にも、同手法を用いて、直鎖メロシアニン分子の励起状態と溶媒構造の解析、混合溶媒中におけるグリシンのプロトン移動反応の解析、アミノ酸の混合溶媒中での溶媒和に関する解析も行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

複雑な電子状態計算を念頭に置いた多配置理論の開発の継続、溶液内擬縮退系のシミュレーション手法の開発の継続、および、これらの手法の溶液な擬縮退系の問題への適用など当該年度中に行うことができた。

今後の研究の推進方策

平成23、24年度に開発を進めた溶液内擬縮退系のための多配置電子状態理論、シミュレーション手法を活用し、d電子、f電子を含む分子系の複雑な電子状態の問題に適用する。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度には、物品費により、平成23年度に整備した計算機環境をより高度な計算を可能にするため増強した。平成25年度には、これらを維持するために計算機関係の消耗品を購入するとともに、理論計算補助のために謝金の支出を、また、成果の発表と連携研究者との研究打ち合わせのため旅費の支出を行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Nickel(II) and Copper(II) Complexes of beta-Unsubstituted 5,15-Diazaporphyrins and Pyridazine-Fused Diazacorrinoids: Metal-Template Syntheses and Peripheral Functionalizations2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Matano, T. Shibano, H. Nakano, H. Imahori
    • 雑誌名

      Chem. Eur. J.

      巻: 18 ページ: 6208-6216

    • DOI

      10.1002/chem.201200463

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Retro-Diels-Alder Approach to the Synthesis of pi-Expanded Azuliporphyrins and Their Porphyrinoid Aromaticity2012

    • 著者名/発表者名
      T. Okujima, T. Kikkawa, H. Nakano, H. Kubota, N. Fukugami, N. Ono, H. Yamada, H. Uno
    • 雑誌名

      Chem. Eur. J.

      巻: 18 ページ: 12854-12863

    • DOI

      10.1002/chem.201201399

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Free Base and Metal Complexes of 5,15-Diaza-10,20-dimesitylporphyrins: Synthesis, Structures, Optical and Electrochemical Properties, and Aromaticities2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Matano, T. Shibano, H. Nakano, Y. Kimura, H. Imahori
    • 雑誌名

      Inorg. Chem.

      巻: 51 ページ: 12879-12890

    • DOI

      10.1021/ic301835c

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Solvent Effect on the Fluorescence Spectra of Coumarin 120 in Water: A Combined Quantum Mechanical and Molecular Mechanical Study2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Kawashima, S. Yamamoto, T. Sakata, H. Nakano, K. Nishiyama, R. Akiyama
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn.

      巻: 81 ページ: SA024/1-8

    • DOI

      10.1143/JPSJS.81SA.SA024

    • 査読あり
  • [学会発表] 相対論的分子軌道法における負エネルギースピノールの効果2012

    • 著者名/発表者名
      井上頌基、渡邉祥弘、中野晴之
    • 学会等名
      分子科学討論会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] ORMAS-MCSCFに基づく相対論的多参照摂動法の開発2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木聡、渡邉祥弘、中野晴之
    • 学会等名
      分子科学討論会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] RISM-SCF法によるメロシアニン類の励起スペクトルに対する溶媒効果と溶媒和構造2012

    • 著者名/発表者名
      田中佑一、吉田紀生、中野晴之
    • 学会等名
      分子科学討論会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] 多参照摂動法と原子価結合法によるシラベンゼン類の励起状態の解析2012

    • 著者名/発表者名
      二宮幸浩、中垣雅之、川島雪生、中野晴之
    • 学会等名
      分子科学討論会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120918-20120921

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公開日: 2014-07-24  

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