研究課題/領域番号 |
23550020
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
浅野 素子 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (80201888)
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研究分担者 |
藤野 竜也 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20360638)
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キーワード | エネルギー移動 / 長距離相互作用 / ポルフィリン / 超交換相互作用 / 長寿命化 |
研究概要 |
亜鉛ポルフィリンーフリーベースポルフィリン二量体において架橋部を直線型・非直線型とした場合のエネルギー移動速度を比較した。すなわちp-ビスフェニレンエチニレンベンゼンとm-ビスフェニレンエチニレンベンゼンを架橋部としてそれぞれにもつポルフィリンへテロ二量体のおいてドナー(亜鉛ポルフィリン)からアクセプター(フリーベースポルフィリン)へのエネルギー移動速度は、直線型の架橋部をもつp体において非直線型の架橋部をもつm体に比べて1.5倍速かった。この違いの要因について量子化学に基づいた解析を行った。 2つの二量体系においてHOMOおよびLUMOはそれぞれ末端ポルフィリンに局在したπ軌道であり、そのエネルギーレベル、電子分布に大きな違いはなかった。しかし、HOMOポルフィリン軌道の下にある架橋部に局在した分子軌道には両者に違いが見られた。すなわち、m-体ではp体よりも架橋部に局在した軌道がHOMOであるポルフィリン軌道とエネルギー差が大きく、さらに、電子密度をもたない炭素原子があり、原子上に節が存在した。また、LUMOよりもエネルギーの高い軌道について調べると、LUMOであるポルフィリン軌道のすぐ上にある軌道について、HOMOの場合と同様の現象がみられた。これらから、架橋部のフロンティア軌道が、超交換機構によるエネルギー移動に大きく関与していることが明らかとなった。 また、配向固定した亜鉛(II)ポルフィリンー銅(II)二量体ポルフィリンにおいて可逆なエネルギー移動により、銅(II)ポルフィリンの発光寿命が10倍に伸張することを見出した。室温溶液中では無発光の亜鉛ポルフィリン三重項状態がリザーバーとなり、短寿命発光種の長寿命化するメカニズムが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
亜鉛ポルフィリンーフリーベースポルフィリン二量体における架橋部形状に違いによるエネルギー移動速度の大きな違いについては、量子化学計算の結果も加えて、解釈することができた。しかし、これを一般性をもたせた概念・理論として提示するところまで、達することができればよりよいと思う。また、新しい系としてリバーシブルエネルギー移動による短寿命種の発光の長寿命化という現象を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
長距離相互作用の化学結合依存性の観点から、不対電子種との超交換相互作用による交換交差速度増加について、明らかにする。 一重項ー一重項エネルギー移動だけでなく、不対電子種がある系における多重項間のエネルギー移動における交換相互作用の役割について明らかにする。 特に長波長側(近赤外領域)の発光測定について、装置を立ち上げ整備する。これにより、ポルフィリン三重項エネルギー移動を発光によりモニターすると共に、エネルギー移動をもちいた新しい近赤外発光メカニズムの開拓を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
効率的に予算を執行するための計画変更に伴い残金が生じた。 長波長側の発光検出システム作成のための小型分光器を購入する。 ほか、消耗品、成果発表のための旅費等である。
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