研究課題/領域番号 |
23550023
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
石渡 孝 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (40134811)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光ー光二重共鳴法 / ヨウ素分子 / イオン対状態 / ASE |
研究概要 |
1. 光-光二重共鳴法によるイオン対状態の解析ヨウ素分子のイオン対状態について、I+(1S) + I-(1S)の解離限界に相関する2つのイオン対状態(0g+(1S)と0u+(1S))の測定を行った。観測には、対称性を考慮して、B3Π(0u+)状態経由の(1+1)光子遷移および(1+2)光子遷移を利用した光-光二重共鳴分光法を用いた。しかしながら、これらの励起状態付近には、I+(3Pと1D) + I-(1S) に相関するイオン対状態が多数存在し、これらの状態からのAmplified Spontaneous Emission (ASE) が強いために二重共鳴遷移の観測が妨害され、目的とするイオン対状態の十分な解析はできていない。2. レーザー多重共鳴法による励起状態ダイナミクスの解明上記の問題を解決するために、イオン対状態間に見られるASE過程を発光スペクトルから検討した。0g+(1D)状態に励起すると、同じ解離限界に相関する0u+(1D) 状態から基底状態への遷移(0u+(1D)-X1Σg+)が、0g+(1D) - B3Π(0u+) 遷移とほぼ同じ強度で観測された。同時に一番エネルギーの低い解離限界に相関する0g+(1D) - 0u+(3P2) へのΔΩ=0遷移も観測できる。これは、第一に、イオン対状態間の遷移がσσ*型の平行遷移で、遷移モーメントが非常に大きい事実と一致する。第二に、0u+(1D)や0u+(3P2)イオン対状態の放射寿命が、励起した0g+(1D) 状態のものに比べて、約1ケタ短いため、励起状態間に反転分布が生じて、ASEが起こり易い状況にあるためであると考えられる。現在、イオン対状態からの時間分割発光スペクトルや遷移モーメントの計算結果をもとに、ASEによる緩和ダイナミクスを明らかにするとともに、ASE過程を利用した高分解能分光法の開発を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画したヨウ素分子のエネルギーの一番高い解離限界に相関する2つのイオン対状態の分光学的な解析がまだ不十分である。一方、この測定中に、ヨウ素のイオン対状態からのASE過程が顕著に見られることを新たに見出したことで、平成24年度に計画していたASE過程を利用した高分解能分光法の開発に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
イオン対状態からのASE過程を利用した高分解能分光法を開発して、状態密度の高い原子価状態の離散準位の観測に適用する。この観測データーをもとに原子価状態のポテンシャル曲線の全貌を明らかにして、State to State Chemistry の立場から、原子価状態(B3Π0u+)の前期解離メカニズムを解明する。また、当初の計画に含まれているI+(1S) + I-(1S)の解離限界に相関する2つのイオン対状態(0g+(1S)と0u+(1S))の測定を継続し、その結果をもとに衝突緩和ダイナミクスの研究に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度の計画に含まれていたI+(1S) + I-(1S)の解離限界に相関する2つのイオン対状態(0g+(1S)と0u+(1S))の解析が不十分なため、これらの状態を利用した衝突緩和ダイナミクスの研究に着手しなかった。その研究に必要な機材(高調波発生用の結晶等)を購入しなかったため物品費、また海外での研究発表を実施しなかったため未使用額が生じた。平成24年度は、この未使用額を物品費、旅費とその他に繰り入れ、平成24年度の予算と合わせて使用する。平成24年度の研究費の交付予定額(1,200千円)と平成23年度の未使用額(1,396千円)を合わせた平成24年度の補助金使用計画は以下の通りである。物品費2,023千円、旅費288千円、謝金35千円、その他250千円。
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