研究課題/領域番号 |
23550024
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
河野 淳也 学習院大学, 理学部, 准教授 (90557753)
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キーワード | 液滴 / 触媒 / イオントラップ / 放射温度計 |
研究概要 |
安価で入手の容易な物質を組み合わせ,希少元素を用いた現行の触媒と同等以上の性能を持つ触媒を作り出すことが本研究の目的である。このため,金属と担体の組成による触媒反応性の差異をハイスループットで測定する方法を提案する。具体的には,位置,速度を完全に制御した液滴(オンデマンド液滴)のトラップ反応装置を開発し,多成分の金属を含む酸化物担持触媒の単一粒子合成を行う。その触媒の反応性を単一粒子のまま評価する手法を開発し,触媒金属組成と反応性の関係を網羅的に測定する。反応性の評価には,反応熱による触媒粒子の温度上昇を利用した手法を新たに作り出す。 平成23年度までの研究においては,オンデマンド液滴を四重極イオントラップを用いてトラップし,溶媒を蒸発させることによって,液滴中の溶質成分をトラップする技術を確立した。平成24年度は,(1)液滴に電荷を付与する技術の確立,(2)トラップ触媒反応装置の設計・製作,(3)反応観測のための放射温度測定の光学系製作を行った。電荷付与技術においては,ノズル直下に電極を配置し,電圧を印可しながら液滴を生成させることによって,その反対極性の電荷を液滴に付与できることを見出した。この知見を踏まえてトラップ触媒反応装置を設計・製作した。反応気体を導入するため,装置は気密設計とした。合成した触媒の加熱,反応温度観測を行うため,それぞれCO2レーザー入射・出射口と放射温度測定のための窓を配置した。一方,放射温度測定のための光学系にはノッチフィルターを配置して,CO2レーザー光の侵入を防いだ。前年度購入したサーモグラフィーカメラを用いて,微小領域の観測が可能であることを確認した。 平成24年度の研究により,液滴への電荷付与技術を確立した。また,液滴から調製した触媒の反応性を評価する装置の設計・製作が完了した。次年度は,この装置を用いた反応性の実際の観測へ進む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は,液滴の蒸発に関する予測のずれがあったために,トラップ技術の開発に当初予定よりも時間がかかってしまった。一方,平成24年度は,主に装置の設計・製作を行った。このうち特に装置製作には一定の時間がかかるため,遅れを取り戻すには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,(1)触媒微粒子のトラップ下における調製,および(2)反応性の観測,を中心に行う。 平成24年度までの研究では,試料としてNaCl水溶液を用いていた。今後は,これを実際の触媒の原料にして実験を進める。一方,本研究では,反応性の観測に,微粒子の放射による温度測定を利用する計画である。この放射量を高精度で観測するために,現状よりも大きな粒子をトラップする必要があると考えられる。平成24年度の研究によって液滴の荷電状態の制御が可能となったので,これを利用してトラップ内の微粒子と反対極性の電荷を液滴に与え,微粒子に融合させ,大きな粒子を生成する。この液滴と触媒微粒子の融合を行うためには,現在よりも高い効率で液滴のトラップを行う必要がある。その実現のため,液滴の減速によるトラップ効率向上技術も併せて開発する。 触媒微粒子のトラップを行った上で,トラップに反応性気体を導入し,反応を誘起する。反応は,CO2レーザー照射による加熱によって誘起する。反応性の高い触媒微粒子の場合は外部加熱以上に発熱を伴うと考えられる。これを放射温度計により観測する。温度測定には,平成24年度に開発したサーモグラフィカメラを中心とする観察系を用いる。トラップ,レーザー加熱,放射量測定をコンピュータ制御することにより,加熱用のCO2レーザーの変調と同期した放射量変化を観測する技術開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費は,トラップする触媒の原料などの試薬や,装置改良に伴う物品の購入に充てる予定である。液滴のトラップ効率を高めるための装置改良として,液滴の減速を考えている。液滴減速には液滴を長距離飛翔させる必要がある。装置全体の高さ調整を行うために部品の購入が必要となった場合には本研究費により賄う。
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