安価で入手の容易な物質を組み合わせ,希少元素を用いた現行の触媒と同等以上の性能を持つ触媒を作り出すことが本研究の目的である。このため,金属と担体の組成による触媒反応性の差異をハイスループットで測定する方法を提案する。本提案では,位置,速度を完全に制御した液滴(オンデマンド液滴)のトラップ反応装置を開発し,多成分の金属を含む酸化物担持触媒の単一粒子合成を行う。その触媒の反応性を単一粒子のまま評価し,触媒金属組成と反応性の関係を網羅的に測定する。反応性評価には,反応熱による触媒粒子の温度上昇を利用した手法を新たに作り出す。 平成24年度までの研究によって,オンデマンド液滴を四重極イオントラップを用いてトラップし,さらに溶媒を蒸発させて液滴中の溶質成分をトラップする技術を確立した。また,液滴に電荷を付与する技術を確立し,トラップ触媒反応装置を設計・製作した。作成した装置には加熱用CO2レーザーの入射・出射口と放射温度測定のための窓を設置しした。研究の最終年度である平成25年度は,この装置を用いて気相トラップした微粒子のCO2レーザー加熱とその温度測定を行った。試料としてKCl微粒子を用いた場合,微粒子の加熱,冷却過程をサーモグラフィーカメラによって観測できることを見出した。一方,CO2レーザー波長の光を吸収しやすい一般の物質については,レーザー照射によるトラップ位置のドリフトが起こることがわかった。解析・考察の結果,この現象は光泳動効果によるものであることがわかった。触媒微粒子の焼成・合成を効率よく行うためには,この光泳動効果による妨害を除くという課題が残った。 本研究により,液滴から生成する微粒子の気相トラップとレーザ照射による温度変化の観測ができるようになった。一般の物質への展開には,レーザー照射方法を工夫して光泳動効果を抑える工夫が必要であることがわかった。
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