研究課題
研究の最終年度であるH25年度は,人工原子内における電子の集団運動の特徴的な振る舞いおよびそおの起源を解明するために,「人工原子の角度相関」の解明に取り組んだ.その成果概要以下の通りである:昨年までに明らかにしたように,人工原子のエネルギー構造および電子ダイナミクスは人工原子の大きさによって大きく異なる.これは,電子相関の強さが原子サイズによって大きく変化することに起因しており,原子サイズが小さいほど電子相関エネルギーも小さくなる,という一般則が成り立つ.一方,本研究において,人工原子の(1s)(2p)電子配置に関して高精度波動関数から二電子角度密度分布を抽出したところ,「原子サイズが小さいほど密度分布の二電子角度依存性が大きい」という,相関エネルギーの大小とは逆の傾向を示す奇妙な振る舞いが見出された.「波動関数は独立粒子モデルに近づくにもかかわらず角度相関が大きくなる」というこの奇妙な振る舞いの起源を明らかにするために,二電子の内部空間における波動関数の確率密度分布の詳細を調べた.その結果,原子サイズが小さい場合に現れる大きな角度相関は,電子間反発力の影響が摂動的であることによって,独立粒子モデルに基づく波動関数が生来持っているフェルミ孔および共役フェルミ孔が顕在化したものであることが明らかとなった.また,人工原子に対応するHe様原子の(1s)(2p)についても確率密度分布の解析を行ったところ,人工原子に見られる場合と同様に,核電荷が大きい場合ほど強い角度相関が現れることが示され,本研究で得られた新しい知見は,独立粒子モデルに一般的に見られる現象であることが見出された.これらの成果は国際会議での招待講演を経て現在Phys.Rev.A誌に投稿中である.
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