研究課題/領域番号 |
23550026
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
星名 賢之助 新潟薬科大学, 薬学部, 准教授 (60292827)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MALDI法 / フェムト秒レーザー / 飛行時間型質量分析 / アミノ酸 / プロトン化 |
研究概要 |
平成23年度は(1)MALDI-TOFMSシステムの構築準備,および(2)既存のMALDI分析装置を用いたMALDI機構の解明のための系統的な実験研究を行った.(1)においては,リフレクトロン型質量分析装置を当該研究費により導入した.また,MALDI装置部の主真空槽,システム一式を設置する架台を設計した.平成23年度中に予定していたフェムト秒レーザー照射と組み合わせたMALDI実験計画が遅延していたが,平成24年度中にはこれらの装置にターボ分子ポンプによる排気系を接続し,課題を遂行できる段階になった.一方で,(2)においては,課題の意義を明確にするために,MALDI機構に関する基礎データの蓄積を行った.試料である20種類のアミノ酸に対して,三種類のマトリックス剤(CHCA,DHB,SA)を用いた信号強度測定を,試料濃度を変化させながら系統的に行った.申請者がこれまで構築したプロトン化反応の熱平衡モデルに基づき,実験結果の再現を試みた.その結果,レーザー脱離されたマトリックス分子,あるいは,マトリックス分子を含む化学種のうち,MALDIプルーム中においてイオン状態にあるのは1000分の1,あるいはそれ以下であるという見積もりを得た.これは,これまで報告されていた見積もりと合致すると同時に,本申請の目標である,MALDIプルーム中の中性分子種をイオン化・活性化することによりMALDI法の感度向上を行うことの有用性をさらに支持する結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の達成度が遅れている主な原因は,リフレクトロン型質量分析装置の機器選定の遅延により,納品時期が年度末になったことである.本課題では,MALDIターゲットを真空槽から大気中へ頻繁に出し入れする必要がある.そのため,申請時は真空保持領域とリーク領域を分離する真空ゲートバルブを別途購入して設置する予定であった.しかし,TOF部と引出し電極部間に真空ゲートバルブが標準装備されているリフレクトロン型TOF装置を販売しているメーカーがあり,これが本申請内容の研究に合致したシステムであった.そこで,申請時選定機種との比較検討を行った.その結果,価格および汎用性において申請時において選定した機器(米国Jordan社製)の方が適当と判断し,購入するに至った.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,申請内容に従い次の内容について推進していく予定である.まず,(1)MALDI装置の立ち上げと信号測定の確認を行う.これまでのMALDI測定で用いているマトリックス剤およびサンプルを用いて,本申請で製作したMALDI-TOFMS装置の性能評価を早急に行う.具体的には,主真空槽にMALDIユニットとリフレクトロン型質量分析ユニットを接続し,ターボポンプで排気する.YAGレーザーの第三高調波をマトリックスと試料の混合結晶に照射し,MALDIスペクトルの測定を確認すると同時に,装置パラメータを最適化する.次に(2)MALDI装置とフェムト秒レーザーを組み合わせた実験を開始する.MALDIプルームにフェムト秒レーザーを照射する実験スキームによるデータ取得を最優先目標とする.なお,申請時に予定していたMALDIプルームの可視化は,前述(2)の実験を優先しているために,研究期間内に実施できない可能性がある.しかしながら,(2)の結果を得ることは世界的に見て当該分野における意義は高く,本研究課題の成果として十分と考える. 現在,主に申請者が装置製作,実験推進を行っており,作業分担が十分にできていないために,進捗がやや遅れている.平成24年度以降,実験装置が立ち上がったならば,研究室の卒業研究生(4,5,6年生)が自ら実験データ取得できるようになるため,課題の推進が加速されると考えられる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は,主に消耗品と旅費にあてる.具体的には,消耗品はレーザー光の制御用光学部品,マトリックス剤・ターゲット試料などの薬品類,MALDI-TOFMSに用いるマニピュレーターなどの真空部品である.また,旅費は学会への参加・発表旅費である.
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