研究概要 |
局所射影分子軌道法(Locally Projected Molecular Orbital)に基づく摂動論(LPMO PT)を発展させ、多数の分子間に働く非共有結合(non-covalent)相互作用を高速かつ高精度に計算する近似手法を開発し、分子クラスター研究に活用した。LPMO PT法は、「近似BSSE-free HF + dispersion」法と呼べる。2電子積分処理部分をopenMPによる並列化することに成功した。このopenMPによる並列化は研究室のMacでも威力を発揮するので、分子クラスターのモンテカルロ(MC)シミュレーションにLPMO PT法が適用するプログラムを作成し(Python Monte Carlo Simulation program for Molecular Clusters, Py(MC)2)、存分に長時間計算が可能な研究室のMacProとMacMini上で分子クラスターの構造変化の内部エネルギー依存を調べる研究を開始した。並列化の結果、水分子25量体(基底関数1050)の計算を容易に実行する事を可能になった。分散項を高速かつ高精度に計算し、水素結合錯体や電荷移動錯体における分散相互作用(Van der Waals力)の寄与を定量的に明らかにした。水クラスター(H2O)n (n≦25)内の水素結合ネットワークを解析した。 水素貯蔵系[M(BH4)n]と[M(AlH4)n] (M=Li, Na) クラスターの量子化学計算により酸化や還元反応に伴い水素原子や水素分子が生成する機構を見いだした。 IClの第2吸収帯励起によって生成するI原子とCl原子の量子状態の分岐比やその解離方向の角度分布について、スピン軌道CI法と非断熱結合要素を含む量子論的な動力学計算に、量子干渉効果を正しく取り入れることにより、実験と理論の矛盾を解消することに成功した。
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