研究課題/領域番号 |
23550033
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
野口 秀典 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (60374188)
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キーワード | 脂質2分子膜 / トレハロース / 和周波発生分光法 / 原子間力顕微鏡 |
研究概要 |
生体反応の多くは、細胞膜表面などの界面での反応が重要な役割を果たしている。このような生体反応を理解するためには細胞表面・界面における分子(水、タンパク質、脂質など)の構造あるいは動的挙動を反応が進行しているその場(水溶液中)で、かつ高い空間・時間分解能で明らかにすることが重要となる。本研究では生体内の過程を分子レベルで高い空間分解能を付与した界面顕微分光法を新たに構築し、生体界面(細胞膜、脂質二分子膜)構造・反応、および機能発現に重要な役割を果たしていると言われている界面水の構造、ダイナミクスの追跡を行う。このような生体界面の構造・ダイナミクスを分子レベルで明らかにしていくことで、生命現象の解明に寄与することを目指す。 本年度は、トレハロースの脂質2分子膜におよぼす効果についての検討を行った。トレハロースは脂質2分子膜に作用し、乾燥保護、凍結保護などの効果を示すことが知られている。しかしながら、その構造や相互作用についていまだ不明瞭な点が多く残っている。そこで本研究では、界面振動分光法および原子間力顕微鏡を用い、トレハロースの脂質2分子膜におよぼす効果について調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞膜表面などの界面での反応を分子レベルで明らかにするという点で、本研究課題は順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、トレハロース以外の類似化合物を脂質2分子膜に添加し、細胞膜-トレハロース管に働く総合作用および構造の効果について、引きつづき界面振動分光法および、AFM観察により分子レベルで明らかにすることを目指す。さらにシャボン膜の構造安定化についても、トレハロースの効果を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
シャボン膜の構造安定化についても振動分光学的に検討を行う。水槽の表面に展開させた脂質単分子膜に、ティップ・ディップ法によりガラスキャピラリー先端に平面脂質二分子膜を形成することが出来る。このガラスキャピラリー先端に集光した可視光と赤外光を照射することで、膜界面の局所的なSFG分光が可能となる。キャピラリー内の環境(温度、pH、イオン濃度)を変化させ、環境変化に伴う膜の分子構造変化、あるいは周囲の溶媒との間に働く相互作用(水素結合、親水・疏水性相互作用など)の変化を追跡し、生体膜界面の構造・機能と水の役割を明らかにする。また、同様に界面活性剤を用いることでガラスキャピラリー先端にシャボン膜を形成させ、ピペット内の圧を変える(陰圧、陽圧)ことでシャボン膜の形状を任意に変えながらシャボン膜の膨張、縮小、あるいは崩壊する際の界面活性剤の構造、および水の構造をSFG測定により分子レベルで詳細に明らかにする。さらに、トレハロースの効果についても合わせて検討を行う。
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