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2011 年度 実施状況報告書

分子デバイス動作環境下における電子状態変化の直接観測

研究課題

研究課題/領域番号 23550034
研究機関大阪大学

研究代表者

加藤 浩之  大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80300862)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード表面科学 / 分子デバイス / 電子状態 / 電界効果 / 表面界面物性 / 有機薄膜 / 機能性単分子膜
研究概要

分子の多彩な性質を利用した電子デバイスが実現した場合、ある種の分子は、数十nmに数Vの電圧が印加されるという強電界下で動作することになると予想される。このとき、分子は強電界によって電子状態を変化させつつも、分子間や電極との間で電荷の授受を行い、機能を発揮しているはずである。本研究の目的は、電極に吸着した分子の電子状態が強電界によってどのように変化するかを、直接的に観測できる新たな手法を立ち上げて解明することにある。 これまで研究では、試料のタイプを分子薄膜と単分子膜の2つに分け、それぞれに適した測定手法を検討してきた。両者は相補的な研究対象であり、実際の分子デバイスに近い前者と電子状態の詳細を見極めることができる後者とに位置づけられる。前者については、軟X線吸収分光(炭素K殻吸収端など)を蛍光収量で計測する手法を導入し、有機薄膜トランジスターにおける駆動中の電子状態観測を試みた。これによって、分子薄膜が金属電極に覆われていても電子状態が測定できることを確認したほか、実際にバイアス電位に依存したX線吸収スペクトルの変化を測定することができた。本年度は、この解析を進め、帰結として薄膜内の電荷分布が分子の部位によって異なる可能性を導きだし、この成果を公表した。一方、後者の単分子膜に関する研究としては、電界放出顕微鏡と光電子分光を組み合わせた手法を検討すると共に、先の分子薄膜の結果を踏まえた機能性分子の合成およびその均質な単分子膜の調整に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題を申請後、現在の所属へ異動があり、研究環境が大きく変化した。これに伴い、研究計画の効率化を図る必要があった。 異動後の研究室では、レーザーを用いた2光子光電子分光を軸とした吸着分子の電子状態分光が主体である。この方法では、通常の光電子分光で得られる占有準位のみならず、非占有準位の情報を高い精度で引き出すことが可能である。これらの情報は、本研究課題で精査を試みる強電界下での電子状態変化を議論する上で絶対値としての基準を与えるものであり、並行して試料のキャラクタリゼーションを進めることが有用である。よって、本課題の後半に予定していた機能性単分子膜の作成をまず行い、研究室の中で分担して実験を進める体制を整えた。実際にも、機能性分子の合成とその単分子膜の調整に成功し、2光子光電子分光からも電子状態に関する情報が得られ始めた。これまでの結果として、おおむねデザインした電子状態であることを確認しており、今後、エネルギー準位の絶対値とその帰属について、確実な情報を得られるものと期待している。 一方、分子薄膜試料に関する実験についても研究状況が変化し、本課題の枠でまとめる必要が生じた。実験は放射光施設を利用したものであり、既に多くの測定結果を取得してきた。本年度は、解析を進めて成果をまとめ上げる作業を進め、その一部を高い評価の学術誌に公表することができた。

今後の研究の推進方策

次年度後の研究の進め方も、今年度を踏襲し、現在の研究室の得意な計測手法を導入し、整合と協調を保ちつつ、当初より予定している計画を実行していく。まず、分子薄膜試料に関する実験結果については、引き続き解析を進め、必要に応じて現在の研究室で得られる測定結果を加味し、早急にまとめて公表していく。一方、単分子膜試料に関しては、まず当初より予定していた電界放出顕微鏡と光電子分光を組み合わせた手法の再調整を進める。 前述のように、異動に伴う研究環境の変化に対応するため、平成23年度は、本課題の後半に予定していた機能性単分子膜の作成と評価の一部を優先的に推進した。実施した部分は、着実な進展があったものの、当初計画していた「電界放出顕微鏡と光電子分光を組み合わせた手法の最適化」は遅延する結果となった。このため、予定していた信号処理系の更新に至らなかったため、当年度の予算の一部は繰り越すことを決めた。しかしながら、装置改良は継続して検討しており、平成24年度はこれを実施する予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の研究費の多くは、「電界放出顕微鏡と光電子分光を組み合わせた手法の最適化」を行うために充てる予定である。特に、本年度の購入を見送った信号処理系の機器の購入を予定している。また、分子薄膜や機能性単分子膜のキャラクタリゼーションに対しても研究費の一部を割く予定である。現在の研究室にある装置にも、吸着分子の電子状態に対して電界効果の情報を得られるポテンシャルを有しているものがある。これらを有効に当研究課題に取り入れるため、改造などを施して発展的に活用する予定である。よって、信号処理装置の他に、多数の真空部品や光学部品などの購入が不可欠である。さらに、分子薄膜系の研究成果等の公開のために、学会の参加および論文投稿料などに予算を充てる必要がある。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Characterization of an organic field-effect thin-film transistor in operation using fluorescence-yield x-ray absorption spectroscopy2011

    • 著者名/発表者名
      H.S. Kato, H. Yamane, N. Kosugi, M. Kawai
    • 雑誌名

      Phys. Rev. Lett

      巻: Vol.107 ページ: 147401(1-5)

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.107.147401

    • 査読あり
  • [学会発表] Characterization of an organic thin film device under operational condition by fluorescence-yield X-ray absorption spectroscopy2011

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki S. Kato, Hiroyuki Yamane, Nobuhiro Kosugi, and Maki Kawai
    • 学会等名
      The 6th Japan-Sweden Workshop on Advanced Spectroscopy of Organic Materials for Electronic Applications (ASOMEA6)
    • 発表場所
      国内
    • 年月日
      2011年11月24日
  • [学会発表] 有機トランジスタ内部の電子状態: 蛍光収量X線吸収法による観測2011

    • 著者名/発表者名
      加藤浩之, 初井宇記, 長坂将成, 山根宏之, 小杉信博, 川合真紀
    • 学会等名
      関西薄膜・表面物理セミナー2011
    • 発表場所
      国内
    • 年月日
      2011年11年26日

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公開日: 2013-07-10  

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