研究課題/領域番号 |
23550035
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石田 豊和 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究員 (70443166)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 理論化学 / 電子状態計算 / 分子動力学計算 / QM/MM計算 / 自由エネルギー計算 / 酵素反応 / オロチジンーリン酸脱炭酸酵素 |
研究概要 |
オロチジンーリン酸脱炭酸酵素(Orotidine 5'-mono-phosphate decarboxylase、ODCase)は生物体内でピリミジン環を新規合成する過程で必須の酵素であり、オロチジンーリン酸(Orotidine 5'-mono-phosphate、OMP)からカルボキシル基を引き抜いてウリジンーリン酸(Uridine 5'-mono-phosphate、UMP)を生成する反応を触媒する酵素である。本酵素の反応加速率の特異性を示す為に導入された作業仮説「反応の基底状態を不安定化する事により、相対的に遷移状態とES錯体間の活性化自由エネルギーを低下させる」を検証するため、藤橋らにより決定されたMethanobacterium thermoautotrophicum由来の高解像度結晶データを用いて分子モデルを作成し、QM/MM計算と分子動力学計算を組み合わせた複合モデリング計算により、脱炭酸過程の反応経路と反応自由エネルギー変化を評価した。QM/MM計算で最適化されたES錯体の構造は、ピリミジン環に結合する6位のカルボキシル基がすべてねじれて面外変角した構造を取る事が確認された。これは基質に対して酵素が立体的な歪みを加えて基質の構造を不安定化しうる事を示唆している。次に得られた複数の初期構造に対してそれぞれ脱炭酸反応経路を計算した。反応過程のエネルギー成分解析により、脱炭酸の結果生成する反応中間体がタンパク質環境下で安定化されうる事が確認されたが、これは脱炭酸とプロトン移動が段階的に進行してUMPが生成されうる事を示唆している。また水溶液中での参照系反応(OMPの脱炭酸過程)との反応自由エネルギー変化の比較から、タンパク質環境の静電場の効果が反応中間体を安定化する要素も無視できない事が確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
天然型酵素の分子モデリングに関してはある程度の研究成果が得られたが、変異型酵素の分子モデリング、反応解析は予定通りに進まなかった。新規な構造データを用いたモデリングに時間を要した事もあるが、出向により研究職が併任となり、研究時間が大幅に制約された事が主な原因である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた天然型酵素の計算結果に基づき、変異型酵素の反応機構を解析する。過去の実験データを参考にする事で、触媒活性の鍵となるアミノ酸残基を変位させた酵素の反応活性への影響を考察するが、少なくとも4つの変異型酵素を検討する事になるため、QM/MM計算、自由エネルギー計算ともに計算負荷が大きくなる事が予想される。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度購入予定であった分も含め、研究費の大半でワークステーションを購入し、今年度に計算機資源を充実させ、集中的に計算を実施する。
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