研究課題/領域番号 |
23550036
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹谷 敏 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (40357421)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ガスハイドレート / ホスト・ゲスト化合物 / 位相差X線イメージング / 粉末X線回折 / 結晶構造解析 |
研究概要 |
CO2やCH4等が他の分子と混合した2種類以上の分子を包接したクラスレートハイドレートを研究対象とし、ケージ内でのガス分子の分布状態を決定するとともに、水分子で囲まれたナノスペースでのガス分子と水分子との相互作用を検討し、ガスの貯蔵メカニズムを明らかにすることを研究の目的としている。 今年度、-80℃の温度条件下で低温型位相コントラストX線CT測定により、エア(N2+O2)ハイドレート、CO2ハイドレート結晶試料の非破壊内部観察を行った。ハイドレート部分、未反応で残された水が凍結して氷になった部分、未反応のCO2が固化したドライアイスが共存する条件下で、これらを識別し、得られた画像の位相情報から、試料内部の密度解析を実施するとともに、密度分解能の評価を行った。位相コントラストX線CTによる密度誤差の大きな要因は、その測定中に生じる温度変動、勾配に起因する部分が大きい。一方、本手法で用いている光学系は、装置設置室内の温度変化や、機械的振動に非常に敏感に影響を受けてしまうため、独自に開発したクライオセルにより、低温で温度変動±1Kで制御し、位相コントラストX線CT法を可能にした。これにより、X線干渉法を用いた高密度分解能測定では、密度誤差5mg/cm3での測定が可能になった。 また、-180℃の低温粉末X線回折測定により、CH4とアルコールをゲスト分子として包接するハイドレート試料の粉末X線回折による精密構造解析を実施した。直接空間法で導出された初期データに基づき、ハイドレート中のアルコールのケージ占有率の算出、および、温度変化に伴うゲスト分子のケージ内での分布の変化を明らかにした。 低温型位相コントラストX線CT測定の結果は、今後、各種ガスハイドレートの精密な密度解析を実施するうえで重要な指針となる。また、低温粉末X線回折測定による研究成果は、国際誌に論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温型位相コントラストX線CT測定および粉末X線構造解析手法を用いた研究に関しては、当初の予定通りに順調に進んでいる。X線回折手法と併用した熱分析技術の開発に関し、若干の遅れはあるが、実験準備は完了しており、平成24年度に実験に着手する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に検証した測定手法をもとに、各種のハイドレート試料の測定を実施する。また、精密構造解析と低温型位相コントラストX線CT測定の両者の測定・解析により得られるハイドレートの密度を比較することにより、求められたハイドレートの結晶構造およびケージ占有率を評価する。さらに、ケージ内でのゲスト分子の分布状態と結晶構造の安定性やケージ占有率との関係について、考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
X線回折手法と併用した熱分析技術の開発に関し、実際に測定を開始する際に既設装置との取り合わせをより良くするための改良を実施する。また、23年度に得られた研究成果に関し、学会参加、論文投稿により公表する。
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