研究課題/領域番号 |
23550036
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹谷 敏 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (40357421)
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キーワード | ガスハイドレート / ホスト・ゲスト化合物 / 位相差X線イメージング / 粉末X線回折 / 結晶構造解析 |
研究概要 |
今年度は、-180℃の低温粉末X線回折測定により、平成23年度のCH4とアルコールの系に引き続き、昨年度のアルコール分子と同程度サイズの炭化水素分子をゲスト分子として包接するハイドレート試料の粉末X線回折による 精密構造解析を実施した。直接空間法で導出された初期データに基づき、ハイドレート中の炭化水素分子のケージ占有率の算出、および 、温度変化に伴うゲスト分子のケージ内での分布の変化を明らかにした。その結果、炭化水素分子がゲストとして包接される場合、ゲスト分子の形状の違いは、ホストである水分子で構成されるケージサイズにほとんど影響を及ぼさないことが明らかとなった。この結果については、併せて実施した分子動力学計算の結果とも一致するものであり、論文投稿の準備を進めている。 また、低温型位相コントラストX線CT測定に関しては、平成23年度に低温(~-80℃)で温度変動±1Kでの制御が可能となっているため、数mmg/cm3での密度差の議論が可能となった。平成24年度は、位相コントラストX線CT撮影における測定条件の最適化を行った。クラスレートハイドレートと氷とが複雑に混在するような試料でも内部構造撮影が可能な条件が明らかとなった。この最適条件に従った測定を行うことにより、従来の同一試料内のみでの密度比較ではなく、異なる試料の内部構造の非破壊測定の結果に基づく密度測定、比較、評価が可能になる。 尚、平成23年度に実施した、-80℃の温度条件下で低温型位相コントラストX線CT測定により、エア(N2+O2)ハイドレート、CO2ハイドレート結晶試料の非破壊内部観察の結果に関し、国際誌に投稿、掲載された(Takeya et al., J. Synchrotron Rad., 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温型位相コントラストX線CT測定および粉末X線構造解析手法を用いた研究に関し、共に、当初の予定通りに順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに検証した測定手法をもとに、各種のハイドレート試料の測定を実施する。また、精密構造解析と低温型位相コントラス トX線CT測定の両者の測定・解析により得られるハイドレートの密度を比較することにより、求められたハイドレートの結晶構造およびケージ占有率を評価する。さらに、X線回折手法を用いた研究の結果、液体窒素温度(77K)以下の温度で、ホスト‐ゲスト相互作用の変化に伴う結晶構造相転移が生じる系の存在が予想される結果が得られた。そこで、平成25年度には、既設の20-30Kまでの冷却が可能な単結晶構造解析用の冷却装置に関し、当該研究で使用している粉末X線回折装置への取り付けが可能かについての検討も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
X線回折手法と併用した熱分析技術の開発に関し、実際に測定を開始する際に既設装置との取り合わせをより良くするための改良を 実施する。また、平成24年度に得られた研究成果に関し、学会参加、論文投稿により公表する。また、低温型位相コントラストX線CT測定に関しては、これまでに得られた測定の最適条件に従っての非破壊測定を実施することにより、様々な試料における密度評価の有効性の検証実感を実施する。
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