研究課題/領域番号 |
23550040
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 宗治 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70431492)
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キーワード | π共役 / フタロシアニン / ポルフィリン / 超分子 |
研究概要 |
本研究では新規なフタロシアニン(Pc)類縁体の合成を通してPc化学の新たな領域の開拓を目指しており、①前駆体調整による新規骨格構築法の開発、②外部拡張類縁体を用いた超分子集合体の制御、③外部配位を用いた分子間相互作用の解明に焦点を当てて研究を行っている。研究計画2年目の本年度は、初年度の研究成果から適宜研究計画を修正し、以下に示す研究実績を得た。①では前駆体として有用なジブロモジピロメテンの反応性を明らかにする過程において、溶媒であるジメチルアミノエタノールとの反応により、アルキル鎖で架橋された新規なトリフィリン骨格が副生成物として得られることを見出した。続いてホウ素を鋳型に用いたジブロモジピロメテンとジイミノイソインドリンの反応により、ジアザサブポルフィリンの合成を試みたが、1:1の鎖状生成物が得られたものの目的の環化体は得られなかった。今後、条件を検討して環化を試みる。また①ではジニトリルの調整によるサブフタロシアニンの新規骨格の合成に挑戦し、環内部に7員環構造を有する類縁体の合成に成功した。サブフタロシアニンは軸配位子として、三塩化ホウ素由来の塩素を有しているが、この類縁体では環内部の7員環骨格により、ホウ素周りの平面性が高くなっているために、塩素置換体は不安定であり、フッ素置換体として得られることを結晶構造解析から明らかにした。②ではピレンで架橋されたサブフタロシアニン二量体を合成し、フラーレンとの共結晶化により、cis体において1:1の会合体を得た。また溶液での会合挙動を見積もったところ、NMRにおいて多少のピークのシフトは見られたものの、会合定数は小さいことが示唆された。③では外部配位部位としてピリジルを有するフタロシアニンの合成前駆体である3,6-ビピリジルフタロニトリルの合成に成功しており、現在環化反応を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画2年目の本年度も、初年度と同様に合成研究を重点的に行い、全ての研究テーマにおいて、新規な分子骨格の合成に成功している。①では前駆体として用いているジブロモジピロメテンの反応性の制御に苦慮しているが、副反応における生成物の構造も得られており、今後改善できると考えている。またこれまでに合成が出来ていなかった環内部に7員環構造を有するサブフタロシアニンの合成にも成功し、この系の一連の化合物がそろったことで、物性変化を包括的に解明することが出来た。②では研究計画記載の二量体の合成および構造・物性解明に加えて、フラーレンとの共結晶化まで研究を進めることが出来た。③は現在のところ前駆体合成や予備的な実験結果のみにとどまっているが、最終年度に十分つながる結果であると考えている。またこれらの結果のいくつかは投稿論文を準備している段階である。 以上から当初計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
概ね研究計画書に従って最終年度も研究を継続して行うが、昨年度までの研究の進捗を考慮して、それぞれについて以下に示す点に重点を置いて研究を進める。①についてはジブロモジピロメテンを前駆体に用いた反応から、さまざまな新規骨格の合成を行う。②については液晶性を付加する目的で、これまでに種々検討を行っているが、現在のところあまり良い成果が得られていないので、置換基を導入する位置や種類を再検討して、研究計画に述べた目的の分子系の達成を試みる。③については外部配位可能な前駆体は得られているので、環化及び金属配位による構造体の構築を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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