研究課題/領域番号 |
23550046
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
樋口 弘行 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (00165094)
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研究分担者 |
林 直人 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (90281104)
吉野 惇郎 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (70553353)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ポルフィリン / 電子構造 / 外部刺激 / 可逆システム / ジアセチレン / スペクトル / プロトン / センサー |
研究概要 |
近赤外領域の微弱な外部刺激に敏感に応答する素子は、高度情報化社会生活における多種多様なセンサー機能などの中枢を担う。中でも光や酸や熱などの外部刺激に対して電子構造が変化し、これに連動する大きなスペクトル変化を誘起する有機分子は、機能性素子材料開発研究における実質的な主役である。 本研究では、外部刺激受容成分を一次元拡張共役系の末端に導入したポルフィリン誘導体を用いて、近赤外領域の吸収帯を安定に可逆的に明滅させるシステム化を目指すものである。ポルフィリン環特有の可視領域の強度の大きな Soret 帯(光合成反応の主たる機能性吸収帯)を、プロトンや金属イオンを引き金とする弱い外部刺激により近赤外領域に移動させ、可視及び近赤外の両領域における吸収帯を可逆的に変換できるシステムの設計、構築、制御手法を確立する。 その目的のために,一次元拡張共役系末端にプロトンや金属イオンの高感度受容成分,電子的刺激の伝達効率を調整するために配向様式の異なるスペーサー、そして機能性成分の三成分をジアセチレン結合によって連結する完全な一次元拡張共役系分子を設計した。分子中の各成分が、距離も構造も明確で剛直かつ電子伝達にも有効なジアセチレン結合で連結されているので、分子の構造―機能相関が容易に解析評価できる。プロトン源や金属イオン源を添加することにより、末端の外部刺激応答成分に加わる刺激がスペーサーを通して約2nm離れた他端の機能性成分であるポルフィリン環の電子状態へ伝達される効率を定量的に解析する。 その影響効率を調節制御できるようになると、材料としての機能物性を合目的にコントロールできることになる。従来の型にない機構による可逆的変換システムが完成すると、酸や金属イオンに対する一層の高感度センサー創出に止まらず、光スイッチや高密度メモリーなど一層の省エネルギー型生活支援素子材料の開発研究にも繋がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は,申請者のこれ迄の成果に基づき,ポルフィリン環に特有の可視領域の強度の大きな Soret 帯(光合成反応の主たる機能性吸収帯)を、プロトン源を引き金とする弱い外部刺激により長波長領域に移動させ、またその新たな吸収帯を可逆的に元に戻すシステムの設計及び構築を行った。 その結果,プロトン受容性部位を2カ所もつ成分を拡張共役系末端に導入したポルフィリン誘導体の合成に成功し,従来の誘導体に比べ,Soret 吸収帯を一層長波長シフトさせることを観察した(一部の成果については,日本化学会第92春季年会で発表,慶応大学日吉キャンパス(横浜市))。しかも,両吸収帯は安定に可逆的に変換可能であり,初期の目標に沿い,もう少しで近赤外領域に到達する迄に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の成果に基づいて,Soret 吸収帯を200nm以上長波長シフトさせるとともに安定で可逆性のある吸収帯変換システムを新たに設計構築する計画である。そのために,申請者独自に発展させてきた設計指針に基づいて新規な拡張共役系ポルフィリン誘導体を構築し,第三の化学物質を検知して可逆的に反応トラップさせることを念頭に置いて,結果,ポルフィリン拡張共役系の長さが一挙に約半分になるような二者間のスペクトル変化を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の使途については,主として,当該拡張共役系ポルフィリン誘導体の合成に必要な試薬,溶媒,ガラス器具及び分離精製用シリカゲル等の購入のための物品費を計上する。また,研究推進途上に生じる課題解決や先端技術の習得などに関する専門書の購入も一部計上している。更に,得られる研究成果を発表したり,当該研究分野周辺の情報収集も積極的に行なう予定であり,そのための旅費を一部計上する計画である。
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