研究課題/領域番号 |
23550047
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
前多 肇 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (40295720)
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研究分担者 |
千木 昌人 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90135046)
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キーワード | ナフタレン / ピレン / ケイ素官能基 / クラウンエーテル / エキシマー / 蛍光消光 / 項間交差 / 蛍光量子収率 |
研究概要 |
強い蛍光を発するスイッチ分子の設計と合成を目的として研究を行い、以下の知見を得た。 1. ナフタレンの1位または1,4位にケイ素官能基を導入した化合物(13種類)を合成し、その吸収・蛍光スペクトルを測定した。その結果、ケイ素官能基を導入すると吸収・蛍光波長が長波長側に移動し、吸光係数と蛍光強度が増大した。メトキシ基やシアノ基を4位または5位に導入すると、それらの効果がより顕著に現れた。9,10-ジシアノアントラセンの蛍光はそれらのナフタレン誘導体によって消光され、その消光速度定数はケイ素官能基のかさ高さに依存することが分かった。 2. ピレンの1位にトリメチルシリルエチニル基およびトリメチルシリルブタジイニル基を導入した化合物を合成し、その吸収・蛍光特性を調べた。その結果、トリメチルシリルエチニル基を導入することにより蛍光放射の速度定数と蛍光量子収率が増大するのに対し、トリメチルシリルブタジイニル基を導入すると蛍光放射の速度定数とともに項間交差の速度定数が増大し、蛍光量子収率が増加しない原因となることが明らかになった。 3. ピレンの4,5位でクラウンエーテルを縮環したピレノクラウンエーテル型化合物(4種類)を合成し、その金属イオン認識センサーとしての利用について検討した。その結果、15-クラウン-5を有する化合物の10-2Mアセトニトリル溶液にMg(ClO4)2を添加したところ、蛍光強度が著しく増大するのに対し、Pb(ClO4)2を添加すると蛍光がまったく観測されなくなった。一方、Ba(ClO4)2を添加すると、0.5当量加えたときに最も強いエキシマー発光を示すことが分かった。これらの現象は、1:1錯体および2:1錯体の形成、金属イオンの添加による静電反発、濃度消光の抑制、重原子効果により説明可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、蛍光性の芳香族炭化水素類にケイ素官能基、アセチレン、電子供与基および電子求引基を導入した際の吸収・蛍光特性について基礎的なデータがおおむね得られた。また、金属イオンの添加により蛍光特性が変化するスイッチ分子の設計指針を得ることに成功した。以上の結果、達成度としては、おおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き金属イオンの添加により蛍光特性が変化するスイッチ分子の開発を行う。また、ゲスト分子となり得る有機化合物を添加した時、あるいは光照射によって分子構造が変化し、それに伴って蛍光特性が可逆的に変化するスイッチ分子の開発も併せて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引き続き金沢大学の学内で研究が行なわれる。有機化合物の合成、各種スペクトル、文献調査のための設備は整っているため、主に薬品やガラス器具類などの消耗品費として研究費を使用する。また、学会発表のために旅費を、研究成果を論文として投稿する際の投稿料等をその他費として計上している。
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